「ラップ口座」を利用している人が、今すぐやるべきこと --- 内藤 忍

アゴラ

本日の日経新聞によれば、富裕層向けの金融商品「ラップ口座」の9月末の残高が、主要4社合計で2兆円を超え、この1年間で2倍になったそうです。投資でリスクを取る日本人が増えたということで、これは喜ぶべきニュースなのでしょうか?

ラップ口座とは、個人が証券会社や信託銀行と投資一任契約を結んで、資金の運用から管理までを任せるサービスです。主要4社と言われる大和証券、三井住友信託銀行、野村証券、SMBC日興証券で、シエア9割以上となっており、9月末の残高は4社合計で2兆1000億円強です。


資産運用を金融機関にすべてお任せできるという点では、便利な商品に見えますが、この記事では触れられていない極めて重要な点があります。

それは、ラップ口座を使った場合の「トータルのコスト」です。

記事の中では手数料は顧客から預かる資産に対して年2%前後と書かれていますが、実際にかかるコストはそれだけではありません。多くの場合、投資信託を使って運用をしていますから、それぞれの投資信託にかかる信託報酬もコストとしてかかってきます。さらに、その投資信託がファンド・オブ・ファンズ型の商品であったりすると、投資信託の中で投資しているファンドのコストもかかってしまうケースもありうるのです。

しかし、どの金融機関の説明ページを見ても、コストが具体的にどのくらいになるかは書かれていません。とある金融機関のラップ口座の費用の説明には、こう書いてあります。

「費用の合計額および上限額については、資産配分比率、運用状況、運用実績等に応じて異なるため、具体的な金額・計算方法を記載することができません。」

確かに、運用方法によって変わってくるのは事実ですが、「不都合な真実」には、あまり触れられたくないようです。厳密にコスト計算するのはかなり複雑ですが、大まかなコストを試算することは難しくありません。ラップ口座自体のコスト(年間2%前後)に加え、投資信託の信託報酬(年間1%~1.5%)がかかりますから、合計すれば良いのです。年間3%以上のコストになっていても、不思議ではありません。1億円の残高で年間3%なら、300万円になります。

低コストの投資信託やETFを組み合わせれば、年間コスト1%以下でラップ口座と同じような運用成果を狙うことは可能です。つまり、年間1~2%のコスト削減は難しいことではないのです。もし、残高1億円で運用コストが1%節約できれば、年間100万円のメリットがあります。これが10年続けば、何と1000万円もの差になってくるのです。

だからすでに「ラップ口座」を利用している人が、今すぐやるべきこと、自分は一体金融機関にどのくらいの手数料を支払っているかを知ることです。定期的に送られてくる運用報告書から、組れられている投資信託のコストを調べて、ラップ口座自体のコストと合計すれば計算できます。

特に、運用残高が1億円を超えるような大口の投資家は、絶対額が大きくなりますから、コストをかけても調べる価値があるでしょう。金融機関と利害関係の無い、金融の専門家に、コンサルティングフィーを払ってでも、調べてもらうことをおススメします。

現に、資産デザイン研究所のパーソナル・コンサルティングにも、そのような相談が増えており、予約も来年の2月まで埋まってしまっています。どうしても早く知りたいという方には、別の方法もご案内いたしますので、こちらからお問い合わせください。

大手4社の残高が2兆円として、年間コスト3%なら、ラップ口座を利用している個人投資家全体では金融機関に対し、年間600億円の手数料が支払われていることになります。これは、喜ばしいニュースではなく、何とかしなければいけない問題だと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。