安倍首相、首都機能移転に前向き答弁

本山 勝寛

安倍晋三首相が10月8日の参院予算委員会で、首都機能移転構想に関する質問に対して前向きな答弁を行ったという報道があった。毎日新聞記事の該当部分を抜粋すると以下の通り。

(安倍晋三首相は8日の参院予算委員会で)、首都機能移転構想について「地方創生を考える上で、東京一極集中の是正は重要な課題だ」と述べ、前向きな姿勢を示した。同時に「国会での議論が進むことがまず大事」とも指摘。「国会から協力の要請があれば必要な調査を行う」とも語った。堀井巌氏(自民)への答弁。


記事のタイトル自体は「<参院予算委>カジノ中心のリゾート 首相、経済効果に期待」というもので、首都機能移転に関する首相答弁はほとんど話題になっていなかった。しかし、首相自身が語ったように、地方創生を考えるうえで、首都機能移転は一つの起爆剤になり得る。強い反対の立場に立っていた石原都知事も変わった今、世論の後押しさえあれば、地方創生の目玉政策として現実味を帯びる可能性がないとも言えない。

以前にもブログで書いたように、首都機能移転は地方創生、少子化対策、首都直下地震への防災という3つの観点からメリットが考えられる。これらのどの要素も、日本がこの数十年で確実に直面する国家的な大課題だ。

特に少子化対策において、出生率1.1前後の東京が地方の若者をブラックホールのように大量に吸収し、子どもの少ない世帯を多数生み出していることは一つの元凶ともなっている。東京で特に深刻な待機児童問題解決のために現在急いで保育園を新設しようとしているが、土地が足りず既に飽和状態なのが現状だ。国会や官庁跡地のみならず、23区内に226もある国家公務員宿舎などを保育園など子育て支援施設に有効利用することで、少子化対策に直接つながることになる。

地方創生も石破担当大臣を任命し、地方創生本部を立ち上げたものの、今のところ既存政策の延長線上以外のものが挙がってきているようには見えない。大胆な施策を実行できなければ、少子高齢化による社会保障制度破綻も「地方消滅」も避けて通れない。首相諮問機関として設置された国会等移転審議会の1999年の答申で、最も高得点の評価を得た那須塩原を中心とした栃木・福島地域への移転が仮に実現すれば、福島の復興にも大いに寄与することになる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、そして地方創生を重要政策として掲げた安倍政権にぜひとも本腰を入れて検討し、実行力を発揮してもらいたい。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。