同性婚に対する教会の教えは不変 --- 長谷川 良

アゴラ

世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は10月5日、特別世界司教会議(シノドス)を開幕した。19日まで2週間の日程で「福音宣教からみた家庭司牧の挑戦」という標題を掲げ、家庭問題と牧会について191人の司教会議議長、62人の専門家らが話し合う。

バチカン放送独語電子版によると、「会合には第2バチカン公会議(1962~65年)のような雰囲気が漂っていた」という。換言すれば、教会の近代化を決定した第2バチカン公会議のように、司教たちの間で教会刷新の機運が満ちている、というのだ、バチカン放送も13日、シノドスの第1週の中間報告(relatio post disceptationem)として「勇気ある牧会への決定の必要性」というタイトルでまとめているほどだ。


シノドスでは「社会の細胞としての家庭」と「家庭が現在直面している危機」という2つの観点から協議が進められていったという。具体的には、1. 家庭の現実、2. イエスの福音から捉えた家庭、3. 社会と教会は家庭のために何が出来るか、という3点だ。

世俗化が進む現代社会で家庭はさまざまな観点から攻撃にさらされている。離婚、再婚、堕胎、純潔、同性婚などの諸問題に対して、イエスの教えを標榜する教会は守勢を余儀なくされ、対応できずにいる。どの一つの問題を取っても、教会の対応次第では信者たちの信仰生活に大きな影響を与える厄介なテーマだ。

夫婦の2組に1組が離婚する欧米社会では離婚・再婚者の聖体拝領問題は大きな課題だ。教会では婚姻は解消できないという教えがあるが、多くの信者たちは離婚し、再婚するケースが増えている。だから、離婚・再婚した信者たちに対しても聖体拝領を許すかどうかで議論を呼んでいる。

現場を担当する司教たちの間でも聖体拝領を認める者と拒否する者とに分かれている。その意味で、教会の方針が正式に決まれば、信者たちだけではなく、現場の聖職者にとっても悩みから解放されるわけだ。

シノドス第1週の中間報告書では、同性愛問題について従来の批判的な発言は影を薄め、新しい視点から捉えていくべきだといった声が聞かれる。具体的には、「教会は同性婚者を夫婦と見ることはできないが、兄弟姉妹として受け入れることは可能ではないか」といった問いかけだ。

ただし、報告書を冷静に読む限り、教会の同性婚への見方には変化はなく、「同性婚は通常の夫婦ではない」とはっきりと釘を刺している。中間報告書の同性愛者に対する「兄弟姉妹的関係」という表現は、教会の教えを否定せず、時代の要請に応じるための妥協の産物といえるかもしれない。

フランシスコ法王は昨年11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、信仰生活の喜びを強調した。同法王は「教会の教えは今日、多くの信者たちにとって現実と生活から遠くかけ離れている。家庭の福音は負担ではなく、喜びの福音でなければならない」と主張している。教会の教えが信者たちにとって負担ではなく、喜びとなるために教会はどうしたらいいのか……、フランシスコ法王の悩みはそこにあるわけだ。

なお、特別シノドスで協議された内容は来年10月開催予定の通常シナドスで継続して話し合われ、教会の最終方針がまとめられる予定だ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。