ここ一両日の話題の中心は小渕優子経済産業大臣の政治資金問題と言ってもよいでしょう。小渕大臣の場合、特に小渕元首相の娘で非常に優秀だとされていること、将来の総理のイスも狙えるポジションにいること、安倍内閣が女性の社会進出をアベノミクスの重要な戦略に置き、内閣改造でその象徴的人物としてスポットを当てていたことなどから今回の政治資金問題に対する失望感はより大きなものになりました。
この問題が週刊新潮に暴露されてから小渕大臣が「まずい」と思ったのは割と早かったと思います。ほぼ翌日には政治資金規正法に引っかかると断念したようなそぶりを見せていたことから個人的にはご本人は案外知っていたのではないか、という気もします。特に2010年、11年には観劇会の収支が報告されているものの12年には記載がなかったのが選挙があるからという「対策」を立てていたとみるのが妥当な気がします。
また観劇は2007年から7年間毎年続けており、「楽しみにしていた」という後援者がいたという事は廉価で観劇が毎年できることを「売り」にしていたと考えられても致し方ないと思います。一回だけのイベントならともかく恒例行事ともなれば収支を聞いていないはずがなく小渕大臣の逃げ道はないと考えています。
私はこのようなニュースに接して怒りというよりばかばかしくなってきてしまいます。将来の総理のイスを狙える人という期待は昨日、今日に始まったことではなく当然、ご本人も意識していたと思います。ならばなぜ、完璧を期さなかったのか、その片手落ちの処理に世間に対する甘さが出てしまった言われても仕方がありません。お嬢様だからしょうがないね、では済まされないでしょう。背負えない日本の期待なら背負わない方がよいと思います。
この問題で一番がっかりしているのは安倍首相でしょう。ここにきて安倍首相はポイントゲットが少ないことから焦っていたはずです。TPPは進まず、ロシアとの北方領土交渉はアメリカに邪魔され、北朝鮮との交渉も延び延び、株価はここにきて大きく下方修正、IMFの日本の経済成長率の見通しは異例の水準の下方修正で12月の消費税再増税には厳しい世論からの突き上げがあることはほぼ間違いありません。「経済の安倍」が完全につまづいている、としても過言ではなく、その中でアベノミクス第3の矢の最重要課題の一つ、「女性の社会進出」の主演抜擢者がひと月ちょっとで舞台から降りるとなれば安倍首相に同情すらしたくなります。
ただ、安倍首相は逆境に弱い男と言われていますのでここからが正念場となります。来年、解散総選挙というシナリオもうっすら見えてきたかもしれません。
政治資金スキャンダルがなぜ起きるのか、といえば金がかかる政治という体質そのものではないでしょうか? 以前、ある大物政治家の秘書が「ご本人から家族まで借金だらけ。普段は良い服を着て良い顔をしているけれど内情は火の車、選挙があるたびに金策に走る」と言っていました。自分の選挙区を守るため冠婚葬祭やイベントには出費を伴う出席がマストで「センセー!」と呼ばれ、他の人より多く包まなくてはならないというその秘書氏の言葉から想像できる「親分」は良い顔をし続ける営業マンそのものです。
金のスキャンダルといえば猪瀬元東京都知事が訳の分からない借用書を記者会見の席でテレビを通じて全国の人に見せつけ、恥ずかしい思いをした記憶もまだ新しいと思います。彼の場合はオリンピックの東京誘致というせっかくの功績をダメにしたばかりではなく、世界にぶざまな知事の姿を発信してしまいました。恰好悪さという点では猪瀬元知事の方に分がありますが、悪質さという点からは小渕大臣は相当責めらそうです。
彼女が将来、総理のイスを再び狙うとしても5年から10年はロスした気がします。
政治資金スキャンダルほどつまらないものはありません。野党やマスコミは目立つ人を必ずトコトン調べ上げることをビジネスとしています。その餌食になることが分かっているなら初めから目立つポジションは受けないことでしょう。また、お金のことは「任せていますから」という発言は政治家から2度と聞きたくない言葉であります。
日本の政治は二流、三流と言われることをまたやってしまったと思うと海外にいる私まで恥ずかしい気持ちになります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。