曲がり角に来た感のある「コンビニ」ビジネス --- 岡本 裕明

アゴラ

曲がり角に行けばコンビニあり、の時代から曲がり角に来たコンビニ、について考えてみたいと思います。

10月18日の日経、コンビニ準大手のミニストップが15年2月の決算月時点で14年2月の店舗数より少なくなると発表しました。同様な現象はサークルKでも見られ、大手三社の増店傾向に対して準大手2社の足踏みが明瞭になったと言えそうです。


コンビニが商品を売るのみならず、公共料金の支払いから銀行機能からコンサートのチケットから宅配借受も含めあらゆるサービスを提供していることを考えるとこのビジネスモデルが廃れることはないと思います。しかし、私も日本ではお世話になりますが、コンビニで買うものは必要なもの、1、2点という目的を明白に持って狙い撃ちショッピングである点においてスーパーとは明らかに違う点を指摘しておきたいと思います。

近所のスーパーに行けば奥様が買い物かごを下げていろいろな商品をゆっくり見ながら何にしようか、迷っています。安いものを見かけたり、おいしそうなものを見つけたら思わず買い物かごに入れてしまうサプライズ出費があることも多いかと思います。また、購入アイテム数も当然ながら圧倒的に多く、スーパーの帰りにはビニール袋一杯、しっかりと買い物をしていることが多いはずです。

また、同一商品の価格を見るとやはりスーパーの方が5%も10%も安いことが多く、家計にシビアな方は便利さより懐具合、という事になるかと思います。

東京あたりの傾向は新型の小型店舗、イオンであったり、ナチュラルローソンといった店も爆発的に増えてきており、消費者の選択肢は明らかに増えています。消費者のパイが同じであれば店舗が増え、供給が増えることで淘汰が進むのは自然な現象であります。ちなみにコンビニ大手4社は2013年から2014年に合計で約3000店も増えているのですが、人口が減少し、消費税引き揚げの影響で以前にもまして懐管理を進めるであろう家計の状況を考えればコンビニが今後手放しで伸びることはないとしても過言ではないはずです。

ところがチェーン店経営の管理の指標は総売り上げと既存店売り上げという二つの大きなセグメントが代表されますが、往々にして既存店売り上げは伸びしろがほとんどないのが現状であります。つまり、経営者が経営者の能力発揮の場として指揮するのは店舗数の拡大以外の何ものでもなく、結果として激しい企業間競争を招くのであります。

幸いにしてコンビニの場合、PBなどの取り込みこそあるものの過度な価格競争は生じていません。よって、主たる争いどころは良質な出店先の開拓と店舗内の商品構成と品質にかかってきてしまいます。その場合、ナショナルブランドの商品は何処でも買えるものですから店舗独自の商品開発がその決め手となり、更に広告宣伝による爆発的販売量の確保という割と限られた戦略しか持ちえないのであります。セブンイレブンのおにぎりなどは明らかにブランド化させたと言ってもよいでしょう。

消費者の動向は時と場合により大きく変化します。ある「きっかけ」というのもあります。例えばあるスーパーの近くに2年ほど前に八百屋が出来ました。100㎡ぐらいの店舗はすべて野菜だけ。ところが、口コミで広がったその人気で夕方遅くに行けば野菜はほとんど売り切れ状態になっています。新鮮さと価格と専門店としての強みであります。これがどう影響したか、といえば近隣スーパーの野菜売り場、イオン小型店舗など野菜を扱っている店の売り上げが落ち込むのです。以前は「相乗効果」も期待されたのですが、市場が成熟し、会計の余力がなくなると「それだけを求めて」遠方からでもやってくるという新しいサイクルに入っているのです。

コンビニは読んで字の如し、便利さを主たる売り物としてきました。いわゆる「よろずや」であります。英語ではGeneral Storeでそこに行けば何でもある店舗形態は世界で昔からあった別に珍しくもなんともないものであります。しかし、そこに行くのはどうしてもそこに行きたいからではなく、そこに店があるから、であるということを考えるとコンビニの奥行きはもはやさほど深くないとお気づきになるかと思います。

繰り返しますが、コンビニが無くなることはありません。しかし、成熟したビジネス形態でかつ、少子化となれば当然淘汰はされるものです。大手三社と言えども今後は活躍の舞台を更に海外にシフトするなどの工夫が必要になってくると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。