フォーブス誌が世界の富豪ランキングを紹介する度に、ふと考えてしまいませんか? 億万長者が財産を使い切るのに、どれだけ時間が掛かるのか——。
貧困と不正撲滅を目指す国際団体オックスファムが29日に発表したレポートが、疑問に答えてくれていました。以下、年数は1日に100万ドル(1億900万円)を支出した場合、資産を使い切るまでを表しています。金利収入は1.95%の金利で受け取る1日当たりの収入、平均金利収入は億万長者が受け取る平均金利5.3%を当てはめた場合の1日当たり収入となります。なお富豪トップ10の資産額は、フォーブス誌が毎年公表する世界長者番付の数字ではありません。フォーブス誌サイトで更新中の数字かと拝察します。
1位 カルロス・スリム(メキシコ、テレフォノス・デ・メヒコ)
資産:800億ドル 年数:220年 金利収入:430万ドル 平均金利収入:1160万ドル
2位 ビル・ゲイツ(米国、マイクロソフト)
資産:790億ドル 年数:218年 金利収入:420万ドル 平均金利収入:1150万ドル
3位 アルマンシオ・オルテガ(スペイン、ザラ)
資産:630億ドル 年数:172年 金利収入:330万ドル 平均金利収入:910万ドル
4位 ウォーレン・バフェット(米国、バークシャー・ハサウェイ)
資産:620億ドル 年数:169年 金利収入:330万ドル 平均金利収入:890万ドル
5位 ラリー・エリソン(米国、オラクル)
資産:500億ドル 年数:137年 金利収入:270万ドル 平均金利収入:720万ドル
6位 チャールズ・コッチ(米国、コーク・インダストリーズ)
資産:410億ドル 年数:112年 金利収入:220万ドル 平均金利収入:590万ドル
6位 デビッド・コッチ(米国、コーク・インダストリーズ)
資産:410億ドル 年数:112年 金利収入:220万ドル 平均金利収入:590万ドル
8位 リリアン・ベタンクール(フランス、ロレアル)
資産:370億ドル 年数:102年 金利収入:200万ドル 平均金利収入:540万ドル
9位 クリスティ・ウォルトン一族(米国、ウォルマート)
資産:370億ドル 年数:101年 金利収入:200万ドル 平均金利収入:540万ドル
10位 シェルドン・アデルソン(米国、ラスベガス・サンズ)
資産:360億ドル 年数:100年 金利収入:530万ドル 平均金利収入:530万ドル
いかに桁外れか、あらためて実感しますよね。トマ・ピケッティ著の「21世紀の資本論(Capital)」がベストセラーになり、香港で民主化デモが起こるはずです。アメリカ生まれの格差撲滅運動「ウォール街を占拠せよ!(Occupy Wall Street)」は、すっかり鳴りを潜めましたが・・。
銀の匙をくわえて生まれてこなかった子供は、階層の壁を突破できない傾向が高いのも悲しい現実として横たわっております。オックスファムがチャート化したグレートギャッツビー指数をみてみましょう。親の所得がいかに子供の将来に影響を与えるかを表しています。
縦軸は親の所得と子供が属する階層との相関性、横軸は所得格差を表すジニ係数。
(出所:Oxfam)
0が理想的であり、数字が大きいほど親の所得と子供の将来との相関性が強くなります。このなかで最も低い数値におさまったデンマークの場合、親の所得が子供の将来に与える影響は15%に過ぎません。格差社会が叫ばれて久しいアメリカだと、低所得者層に属する親の下に生まれた子供の50%が中・高所得者層へ移動できないことになります。ペルーともなれば、70%に達していました。
映画「ウォールス街」で、ゴードン・ゲッコーが発したもうひとつの名言「内輪の人間でないなら、蚊帳の外ってことだ(If you’re not inside, you’re ’outside’ )」が思い出されます。オックスファムは解決策のひとつとして富裕税を提案していましたが、LVMHのフベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)のように、税金逃れで国籍変更を試みる方が続出する公算が大きい。抜本的な打開策は、残念ながら見出されていないのが現状です。
(カバー写真:AP)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年10月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。