2月に開店する予定の「Shinoby`s Bar」。その経営のヒントになればと、新しいレストランや飲食店に意識的に行くようにしています。そんな経験の中、改めて実感したことは「成果は足し算ではなく、掛け算で決まる」ということでした。
写真は、とあるイタリアンで出てきたカルボナーラです。麺が自家製で、注文をすると目の前で機械を使って作り始めます。表面がザラザラしていて、太くもっちりとした弾力のある麺が、カルボナーラのソースに良く絡み、上にかけたイタリアントリュフの強烈な香りも加わった、最強の一品でした。
しかし、お店の立地は私鉄沿線の駅前のガード下。かなり古ぼけた内装で、インテリアも垢抜けません。恐らく銀座や青山のイタリアンに行けば、3000円くらいの価格になるのでしょうが、ここでは1人前1700円でした。
美味しいものが食べられればそれで良いという人には、穴場のお店ということになるのでしょうが、レストランの経営としてはとても勿体ないと思いました。
このお店に足りないのは「仕事は掛け算」という発想です。
家では味わえない特別な時間を過ごしに来るイタリアンレストランでは、お店の内装、BGM(音楽や音への配慮)、ワインの品揃え、料理のバリエーション、料理のクオリティ、サービスのレベル、デザートやお茶の水準、価格、といった数多くの要素が顧客満足度に影響します。
しかも、それらは足し合わせていくものではなく、掛け合わせていくものなのです。
例えば、雰囲気も、料理も、ワインも最高のお店であっても、サービスが今一つであれば、積み重ねてきたプラスの要素がすべて台無しになってしまいます。
全ての要素が一定レベル以上にならないと、掛け算での評価は上がりません。1つでも0(ゼロ)の要素があれば、他がいくら高い評価でも、合計は0になってしまうのです。
これは、飲食店の経営に限りません。仕事を1つ1つ丁寧にこなしていっているのに、思った通りの成果が得られないという場合、「掛け算の発想」から何がボトルネックになっているのかを考えてみる。すると、何をすべきかが見えてきます。
すべての要素が水準以上のクオリティを実現しないと、全体で高い成果が実現できない。だから、もし成果を高めたいと思うなら、足りない部分を見つけ出し、それを集中して底上げする。その方が、強みを伸ばすより、改善することができるのです。
仕事は掛け算で成果が決まる、ということを理解しておくと、大切なのは全体のバランスを取ることであることがわかります。1つのことが極端に強くても他の分野が弱いと、全体として出てくるアウトプットは、弱いところからの制約を受けてしまう。
強みを伸ばすことも重要ですが、まずは弱い分野を底上げすることから、手を付けるべきです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。