「円安と『おもてなし』がふやす訪日観光客」という、26日付けの私のブログの後半に「円が130円、140円とさらに安くなるようであれば製造業の国内回帰が強まる……」と書いた。この点について、「普通の国民」さんが「そんなに上手く行くでしょうか?」というコメントを寄せている。
円安による、材料費、電気代などの高騰で結局国内回帰は採算に合わないことになるのでは……。例え仰る通りになっても、今のままでは非正規労働者が増えるだけで、相変わらず将来に不安があり、消費に回らないのでは
私も「普通の国民」さん同様、その不安はぬぐえない。だから、「楽観は禁物」と書いた。その上で、あえて言いたかったのは「あまり悲観するのもどうか。日本人のやる気と勤勉性を信じたい」ということである。
その根拠をもう少し付け加えれば、今回の選挙戦で自民党が強調していることに相乗りするわけではないが、現在、日本の失業率は3.7%にまで下がっている。「増えている雇用は非正規労働者だ」というのは確かだが、失業しているよりはずっといいだろう。
また、円安がさらに進んだ場合、材料費や電気代が上がるのもその通りだが、少なくとも人件費比率の高い労働集約型産業の競争力は上がるから、そうした産業の国内回帰が進むことは間違いない(「おもてなし」を軸とする観光産業も円安とともに市場と雇用の場が広がる典型的な労働集約産業である)。
そしてもう1つ、今でも独自性の高いハイテク素材や電子部品、工作機械、測定装置、ロボットなどの競争力は高く、そうした技術主導型事業・商品に産業の重点が動くことは間違いあるまい。
また、近畿大学が開発した養殖マグロや旭酒造の純米大吟醸「獺祭」など海外でも評判の日本酒、品種改良された果物など、新たな輸出商品として育つ可能性を秘めたビジネスも少なくない。
後は、そうした日本人のやる気と勤勉性を信じるかどうか。重ねて言えば、私は信じたい。
さらに付言すると、日本人の生活水準はすでに先進国型の豊かなレベルに達している。そうした国が高成長を維持することはありえない。でも、日本よりも先に先進国化した西欧諸国では低成長でも快適で便利な生活が維持されている。
日本もそうした水準を維持するのは、それほど難しいことではないだろう。ただし、そのためには規制緩和、行政改革を進めることが不可欠である。 楽観は禁物だが、あまり悲観するのもどうか。日本人のやる気と勤勉性を信じたい。
編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2014年11月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。