米11月住宅着工件数は102.8万件となり、市場予想の104.0万件を下回った。前月の104.5万件(100.9万件から上方修正)を1.6%下回り、過去7ヵ月間で4回目の減少となる。
内訳をみると、一戸建てが5.4%減の67.7万件と、約1年ぶりの高水準を遂げた前月の71.6万件を下回った。3ヵ月ぶりに減少し全体を押し下げている。ただし複合住宅は6.7%増の35.1万件と、前月の9.9%減から増加に反転した。前年比での住宅着工件数は7.0%減と、増加トレンドに終止符を打った。一戸建てが4.6%減と5ヵ月ぶりにマイナスに振れている。複合住宅は11.1%減と、2ヵ月連続で減少した。
4大地域別では、3地域が増加。10月の4地域から減少した。今回は、住宅市場の規模が最も大きい南部が19.6%減と、前月分の増加を完全に打ち消し45.4万件だった。一方で、西部が28.1%増の27.8万件と、前月の減少を相殺し大幅反発。同じく中西部も14.4%増の18.3万件、北東部も8.7%増の11.3万件と、それぞれ前月の減少から転じている。
住宅着工件数は、今年の夏の水準を回復できず失速。
米11月建設許可件数は103.5万件となり、市場予想の106.6万件に届かず。2008年6月以来の高水準を達成した前月の109.2万件(108.0万件から上方修正)を5.2%下回っている。住宅着工件数と同じく、過去7ヵ月間で4回目の減少を示した。
内訳をみると、一戸建てが63.9万件。少なくとも約1年ぶり高水準だった前月の64.7万件から、1.2%減少した。複合住宅は11.0%減の39.6万件となり、一戸建てと合わせ3ヵ月ぶりに減少している。建設許可件数の前年比は5.0%減と、前月の4.2%減を下回り6ヵ月ぶりに減少した。一戸建てが5.9%減と3ヵ月ぶりにマイナスに落ち込んだほか、複合住宅も3.4%減と6ヵ月ぶりに減少している。
米11月建設中件数は前月比1.2%増の81.4万件となった。件数ベースでは少なくとも、2009年1月以来の高水準を達成。一戸建てが1.7%増の36.4万件と4ヵ月連続で増加したほか、複合住宅も0.9%増の45.0万件と3ヵ月連続で増えた。
モルガン・スタンレーのテッド・ウィーズマン米エコノミストは、結果を受け「10月分の上方修正を踏まえると決して弱い数字ではなく、米10-12月期国内総生産(GDP)の予想を2.1%増で据え置き、米7-9月期GDPも改定値から4.7%増への上方修正を見込む」とまとめた。ヘッドラインほど悲観的な評価を下していない。
ただしウィーズマン氏は、今後の住宅市場に慎重なスタンスを示す。9月までの年初来で「賃貸向けの住宅は前年比で119.8万件増加した半面、持ち家件数は65.7万件減少した」という。賃貸物件が多い複合住宅は建設許可件数が10月に44.5万件、11月に39.6万件だったところ、着工件数はそれぞれ32.9万件、35.1万件。新規住宅購入者の減少を背景に複合住宅着工件数は今後、増加する公算が大きい。
一戸建てには、在庫余剰の気配が立ち込め始めている。11月の一戸建て住宅着工件数を掘り下げると「75%にあたる50.8万件が販売向けだった」という。注文物件や投資物件を除く販売向け住宅は米10月新築住宅販売件数を大きく上回っており、住宅市場の減速につながりかねない状況だ。
——以上、住宅着工件数では実体が伴っていない景気拡大の様子が浮かび上がりました。新規住宅購入者の割合は今年、約30年ぶりの水準に低下したというデータもあり、今後は一戸建てと複合住宅の数字にかい離が開きかねません。原油安も、一戸建て住宅を下押しする圧力となりえます。エネルギー業界をリストラ・再編の波が襲い、テキサス州など石油生産に依存する州の経済減速・財政悪化が予想されるためです。米11月小売売上高こそ好調だったとはいえ、ガソリン価格の下落でどこまで消費者が恩恵を受けるかは不透明で、住宅市場の回復には黄信号が灯りつつあります。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。