銀行で売れている投資信託の不思議 --- 内藤 忍

アゴラ

内藤忍

銀行の店頭で気になるランキングを見つけました。投資信託の売れ筋ランキングです。銀行の窓口に来ている顧客の多くはシニアの投資初心者の方。そんな人たちに人気の商品のようです。

しかし、ラインアップを見ると、かなり偏った商品ばかりが売れていることがわかります。


まず、投資対象がマニアックなものばかりです。REITファンドはまだしも、米国のエネルギー産業の株式に投資すると思われる「エネルギーラッシュ」、世界のヘルスケアビジネスの株式に投資すると思われる「健次」。さらにはアメリカのバンクローンに投資するファンド。いわゆるテーマ型ファンドと呼ばれるもので、投資の初心者向けの商品ではありません。

次にコストを考えると割高なものばかりです。恐らく、ほとんどの商品が販売手数料3%(税抜き)、信託報酬1.5%以上だと想像されます(興味のある方は調べてみてください)。購入時初年度は4%以上のコストがかかります。リスクはすべて投資家が取り、その見返りにリターンが8%あっても、半分は金融機関に持っていかれるという高コスト商品です。

さらに、インデックス型の商品がまったく入っていません。機関投資家が、アクティブファンドからインデックスファンドへのシフトをはじめているのと正反対の動きです。インデックスファンドは、販売手数料も信託報酬も低く、金融機関にとっては収益性の低い商品です。手数料が低いから売らないというようなことは無いと信じたいですが、何とも不思議なランキングです。

少なくとも言えることは、このような「売れ筋商品」というのは、お客様が自分で見つけてきた商品というより、店頭で金融機関の「専門家」に薦められて購入することになった商品だと思われます。シニアのお客様が、店頭で「エネルギーラッシュに投資したいわ」とか「健次をもらえるかな?」などと言ってくることは考えられないからです。

自分の家族や友人にも自信を持って薦めることができる商品を、お客様にも提供するのが商売の基本だと思います。果たして銀行の窓口で投資信託を販売している人は、自分の家族や友人にも、こんな投資信託を薦めているのでしょうか?

金融機関の窓口で金融商品を薦められたら「あなたは投資していますか?」「ご家族にも薦めていますか?」と聞いてみましょう。売れ筋商品が売れている「本当の理由」がわかるかもしれません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。