分かりやすい論評が続けて出たので、紹介がてらブログでまとめておこう。
ピケティブームで“格差”に再ブーム化の兆しが出ているが、格差是正で対立軸をアピールせんとする民主党や共産党といったリベラルの主張は、現実と完全に逆行するものだ。
本来ならOECDやILOから勧告されているように、強すぎる正社員の解雇規制等を緩和して、中小零細企業の正社員や非正規雇用にも適用できるようなより現実的なルールを作るべきだ。
でも、そうすると、連合傘下の大企業の組合員や公務員さまは困ってしまう。たとえば「半年分の給料を上乗せすれば解雇できますよ」なんてルールが出来れば、そんなもの無しにクビを切られることも珍しくはない中小零細企業の従業員やパートさんにとっては、これ以上ないセーフティネットだろう。
でも50歳で早期退職に応募すれば一億円くらい貰える朝日新聞社員にとっては一億近くも損することになるので、石にかじりついてでも反対することになる。
だから、そういう守られすぎのオジサンたちを支持基盤とする民主党が「金銭解雇の導入には断固反対、派遣法も廃案にして正規雇用の職を守る」というスタンスなのは当然だ。
でも彼らの本音は「連合傘下の大企業正社員や公務員の既得権は守ります、中小零細企業の労働者とか非正規雇用がどうなろうが知ったこっちゃないぜ」というもので、格差の是正どころか、偽のムシロ旗を掲げて小金持ちの傍に立ってる反動勢力に過ぎない。今でも自治労を強い支持基盤とする社民党も基本は同じ。
「オワコン」労働組合と決別できず。イメージ刷新に大失敗した民主党で「期待」するなら、あの議員
共産党は別にそうしたしがらみがないんだから本物のむしろ旗を上げろよと思うのだが、彼らはもっと悪質で「大企業はキャッシュをいっぱい溜めこんでいて、それを吐き出させれば既得権にメス入れなくてもみんなハッピーになれます」と嘘のレシピで作った魔法のカクテルで弱者を悪酔いさせている。
というわけで、まとめると日本の格差はエコノミストの言う通り、終身雇用の適用されうる大手正社員とその他労働者の間に存在するのだが、
自民 「大企業の賃上げすればトリクルダウンで下々も豊かに~」
民主&社民 「異議アリ!大企業の正社員とか公務員の既得権をもっと手厚く守ろう!」
共産 「大企業を絞ればいっぱいお金が出てくるよ」
という具合に三者三様にわけのわからないことを言っているので、たぶん今後もずっと議論はかみ合わないと思われる。まああえて言えば、それでも一応は労働市場改革を忘れたころに特区構想などで小出しにしてくる自民はまだマシで、民主&社民は格差固定促進派、共産は電波政党くらいの目で見ておいた方がいいだろう。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年2月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。