朝日新聞を訴える人へ! もっと効果のある事しませんか!?

渡辺 龍太

朝日新聞の慰安婦に関する記事の誤報で、日本の名誉が傷つけられたとして訴訟が起きています。既に原告の数が2万人を超える勢となっていて、史上空前の集団訴訟と発展しそうな勢いだそうです。(原告の人のホームページ:朝日新聞を糺す国民会議


私はメディアで働く一員として、この訴訟に、どうして今回の慰安婦誤報が起きてしまったのかを検証するという事に関しては、重要な意味はあるとは感じます。ですが、今後、この誤報騒動の様な事が再び発生するのを防ぐためだとすると、集団訴訟だけで不十分な気がしてしまいます。

というのも、実は以前にも同じような大規模訴訟を、NHKに対して起こした1万人程度の方々がいるのです。そして、裁判の結果、裁判所は次のような判決を出しているからです。

視聴者として原告になった人については、

「さまざまな立場の人たちへの十分な配慮もないまま、先入観に基づいて本件番組を制作し、放送してしまって被控訴人(編注:NHK)に対して損害賠償を請求したいという思いは理解できないわけではないが」

と一定の理解を示しながら、法的責任については、

「個々の具体的な権利を侵害するものでない限り、いわば報道のマナー違反にとどまるべき」として認めていない。

(引用元;J-CASTニュース

NHKを訴えている方々は、この判決を不服として上告しているそうです。ですが、いずれにせよ、朝日新聞への訴訟も同じような結果になるとは予想できます。要するに、朝日新聞を訴えたとしても、裁判の過程で朝日新聞に色々と聞きたい事が聞けるというだけで、朝日新聞自体を変える事は出来ない可能性が高いのです。

そうだったら、別の事にもエネルギーを注いだ方が、メディアを変える事が出来るのではないかとメディアで働く者として思うことがあります。それは、世間の人々のメディアリテラシーを高めるという事です。

手前味噌ですが、慰安婦の誤報記事を検証している書籍、「朝日新聞」もう一つの読み方 の一部をご覧下さい。

この記事の、ドラマ仕立ての演出を分析していきましょう。

まず前半の『テープの中で女性は「思い出すと今でも身の毛がよだつ」と語っている。体験をひた隠しにしてきた彼女らの重い口が、戦後半世紀近くたって、やっと開き始めた。尹代表らによると、この女性は68歳で、ソウル市内に1人で住んでいる。最近になって、知人から「体験を伝えるべきだ」と勧められ、「対策協議会」を訪れた。メンバーが聞き始めると、しばらく泣いた後で話し始めたという。』という部分の演出力は秀逸です。これを書いている人が、読者に『女性に対する同情』、『強制連行をした男性への怒り』を確実にあおろうとしている意思を感じます。

その理由は、この文の細かい部分を見るとよくわかります。実は、この文章は女性の感情について書いてあるだけで、何の事実も書かれていないのです。分かるのは重い口を開いたというだけです。何故、半世紀近くたって口を開いたのかは書かれていません。そして、知人が体験を伝えるべきと言った理由も分かりません。また、しばらく泣いた理由も全く書かれていません。ここで分かるのは、女性が細かい理由は分からないものの悲しい思いをしたという事だけなのです。

この様に、ちょっと細かく文章を読めば、「おや?」と思うような記事が何十年も信じられてきたのです。そして、実は、朝日新聞が誤報を認めるよりずっと前から、メディアリテラシーの高い人々は朝日の記事が間違っていると知っていました。だから、そういう主張も一部メディアなどで取り上げられてはいました。しかし、世間の大半の人は、「天下の朝日新聞が報道している事に嘘はないはずだ!」と誤報の可能性を指摘する真っ当な声より、朝日というブランドを信じ続けたのです。私には、ここにかなり大きな問題があるように思えます。

というわけで、「朝日憎し!」という気持ちもわかりますが、同じ問題を二度と起こさないためにも、メディアリテラシーの向上という事にも一緒にエネルギーを注ぎましょうと、このブログを通じて2万人の方に呼びかけたいです。

※Facebookで「マスコミもう一つの読み方」というグループを作りました。そこにコメントを頂いたら、確実に返信いたします。



渡辺龍太:NHKや民放で、海外向けの英語放送から国内向け放送まで、様々なニュース番組の制作に関わる。現在、それらに加え、ネットニュース、書籍、有名タレントのメルマガやブログの企画プロデュースなどを行い、商業メディアのマーケティングや売り上げと日々格闘している。

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