中国では「人を見たら泥棒と思え」--- 井本 省吾

アゴラ

中国で日本語教師をしていたというタマさんのブログが面白い。13日付けのテーマは「 産業スパイになる中国人をメンタリティーからみると~被害社長の告白から」。

中国人の産業スパイの被害に遭った日本人経営者の告白を基に、産業スパイになる中国人の心性を分析している。


この経営者は何年もかけて開発したバイオの製造技術をもとに中国に工場を作った。それを自社の中国人社員に丸ごと盗まれて中国国内でコピー工場を作られ、その製品が自社より安く売られていた、という話。経緯はこうだ。

日本に留学していた一橋大学出身、証券会社勤務の才媛中国人女性A(当時36歳)を採用、彼女の推薦で四川大学生物科学科を卒業したB(当時23歳)も雇用。二人とも仕事ができ、真面目に仕事に取り組み、人柄もいい。

すっかり二人を信用し、将来を期待した日本人経営者は自分の知る知識、技術のすべてを二人に教える。そのためもあって中国事業は順調に進んだが、数年後、A、4ヶ月遅れてBが退職を申し出る。

驚いた日本人経営者は他の日本人幹部とともに、熱心に留任を説得するが、二人の意思は堅い。残念だと思っているのも束の間、翌年、Bが同社の技術を無断で活用したコピー会社を作り、安値販売に乗り出す。さらにそのコピー製品の日本での販売会社社長はAだった!

さらに、この後がすごい。日本人経営者が告訴を決めると、Bは悪びれずに「自分たちの会社に出資しないか。儲かるから一緒にやろう」と持ちかけてくる。

技術を盗んでおいて、儲け話をすれば折れるのではないかと思っている。しかも裁判の直前、Bは経営者のところへ来て「ごめんなさい!」とつたない日本語で必死に謝る。

だが、法廷が開かれると手のひらを返して自分側に都合が良い事を言いたい放題。閉廷後、裁判官がいなくなると、また寄ってきて「ごめんなさい」と頭を下げる。「すまない」という気持ちがあるようでいて、自分の利益のためには何でも必死にやる。それを矛盾と感じない。まさにこれが中国人のメンタリティーなのだろう。
 
日本人経営者はこう振り返る。

「でも、彼女らが最初から技術を盗むつもりで入社してきたのではなかったと思いたいですね。(製品の)需要が伸びて、『これは儲かる』と思ったから、商売欲が出たのではないでしょうか」。
 
タマさんは「実はここが中国人産業スパイの大きな問題」と指摘する。
 

雇った中国人がいつでもスパイに変わる可能性を秘めているというのが中国人従業員の問題点なのです。また、特定の技術情報に携わったことで、後からお金で誘われてスパイになったり、国の根幹にかかわる情報に触れる仕事についたことで、政府からお金、あるいは脅しによってスパイに変貌するということが、国の体制とあいまって、リスクとして存在するのです

まさに、その通りなのだろう。タマさんの分析にはサビの利いた落ちがある。

さて、実名公表で暴露した社長ですが、こう述べています。
「私は、中国人が嫌いなわけではありません。被害に遭った我々を応援してくれる中国人もたくさんいました。ただ、日本人とは感覚が全く違うということを知っておくべきでした」と。
まだ「いい中国人もいる」と幻想を見ているようです。次にこの社長をだます可能性があるのは、「応援してくれた中国人」です。この程度の認識では、また騙されるでしょうね

戦前、中国の上海や福建省の副領事をしていた米外交官ラルフ・タウンゼント氏の著書「暗黒大陸 中国の真実」(芙蓉書房出版)には、この産業スパイ事件と類似のエピソードが多い。

米国人の敬虔な女宣教師が奴隷扱いを受けている中国人の男の子を引き取って可愛がり、学校に入れ、面倒を見ていた。ところが、排外運動の嵐が吹いて、男の子はどこかに消えた。燃え上がる騒動に女宣教師が避難しようとしていたところ、暴漢が玄関に現れた。驚くなかれ、真っ先に略奪を働いたのは自分が面倒を見ていたあの子だった。

別の宣教師の話。ミッションスクールの校庭にある空き家を貸してくれと中国人信者に頼み込まれ、「空いている間だけ無料で」という条件で貸した。ところが、その後立ち退きを求めてもがんとして出て行かない。宣教師も騒ぎになるのを恐れて、結局居座られてしまったという。

最初は平身低頭で頼み込み、いったん居座るとさらに要求を強めることもしばしば。同書はそんな例に満ちている。

中国人は戦前も戦後も変わらない。「人と見たら泥棒と思え」と言うが、とりわけ中国大陸ではその覚悟が必要なのだろう。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年2月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。