岡田さん、御自愛ください --- 長谷川 良

アゴラ

「日本のメディアが岡田(克也)さんがまた手術したと報じてるわよ」

家人が驚いたように言う。当方は早速、岡田さん{野党・民主党代表)が26日、網膜剥離を再発して、緊急手術をしたというニュースを読んだ。左目を眼帯した岡田さんの写真が出ていた。昨年末、網膜剥離で手術を受け、2か月後の再手術だ。岡田さんも少しショックだったろう。


網膜剥離の手術では、剥離した網膜を網膜色素上皮に再度、付着するために無臭、無色、無毒の化学物質SF6ガス(六フッ化硫黄ガス)が目の中に注入される。ガスの力で網膜を再び元の位置に押し戻すためだ。SF6ガスは平均1週間から長い場合、12日間ほどで自然に消滅していく。SF6ガスが剥離した網膜を網膜色素上皮に付着させたかは、再検査しなければならない。網膜が定着しない場合、次は油を注ぎ、網膜を視神経の位置に押す。油の場合、網膜が定着後、油を抜き取る手術を受けると聞いた。

当方は昨年7月末、Ablatio retiae rechts(右目網膜剥離)と診断され、緊急入院していた時、病室の患者の1人が「数日前、油を導入する手術を受けたばかりだ」と言っていたことを思い出した。岡田さんも網膜が定着するまで静養すべきだ。

どのメディアか忘れたが、岡田さんが「網膜剥離となってから好きな本が読めなくなったが、相手の話をこれまで以上に聞くようになった」と述べた、と報じていた。読書好きな岡田さんにとって本が読めないことは辛いだろう。それでも「相手の話をこれまで以上に聞くようになった」ということは素晴らしい。

政治家は自身の心情、考えを国民に訴える機会が多い。どうしても相手の話を聞くというより、自身の考えを話すことが多くなる。その政治家の岡田さんが「相手の話をよく聞くようになった」という。画期的な変化だ。国民や有権者の考えや悩みにこれまで以上に耳を傾けるようになることは、政治家として大きな飛躍だ。

当方も網膜剥離になって以来、新聞をじっくり読めなくなったし、好きなTV番組も1時間以上は観ることができない。その一方、ラジオを聞く機会が増えた。手術直後はラジオが唯一の情報源だった。正午ニュースと夕方6時のニュース番組が全てだった。時間が来ると、ベッドに横になって耳を傾けて聞く。ラジオが素晴らしいニュース機関であることを理解した。画面を使って説明するTVニュースとは違い、ラジオのニュースは分かりやすく、詳細だ。夜は目が疲れるから早めにベッドに入り、ラジオの音楽番組を楽しむ。日々の生活が新聞、TV、コンピューター中心からラジオ中心に変わってきた。そして岡田さんほどではないが、相手の話を少しは以前より聞くようになった。

岡田さんは野党代表であり、その職務は秒刻みだろう。自愛してほしい。そして国民の話、悩みに耳をかす立派な政治家となって頂きたい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年3月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。