債券の利回り低下問題は、金融資産だけでは解決しない --- 内藤 忍

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安定したインカム収入が狙える債券は、分散投資に欠かせない資産ですが、世界的な金利低下で投資魅力は低下しています。日経新聞のコラムで債券投資をどうするかが考察されています。


図は過去10年間の金融資産間の相関を計算したものです。相関係数がプラスになっていると資産が同じ方向に動く傾向が高いことが示され、分散投資の効果が低くなることを示しています。

債券は株式や米国ハイイールド債などと負の相関になっており、分散効果が高いことがわかります。しかし、金利水準は既に低下しており、今後市場金利が上昇することになれば、債券価格が下落するリスクも高くなっていると言えます。

確かに資産運用の悩ましい状況ではありますが、その解決法の1つは「金融資産の呪縛」から逃れることではないかと思います。

記事の中に出てくるのは株式、債券、REITといった金融資産ばかりですが、ここに実物資産(不動産)を組み合わせることで問題解決ができる可能性があります。投資対象になるのは、レジデンス(居住用不動産)物件です。

インカム収入という点では債券投資に比べ、居住用不動産は魅力的な投資対象となっています。例えば、日本では10年国債の利回りは0.5%以下ですが、都心のワンルームマンションであれば、賃貸利回りは4.5%前後と10倍の格差があります。海外においても、債券に比べ不動産の利回りは高くなる傾向があります。

もちろん不動産には債券よりも大きな価格変動リスクがありますが、そのデメリットを考慮しても、組み合わせによってメリットを見つけられる資産と言えるのです。ただし、現物不動産は金融資産とは異なり、インデックス投資のような方法では投資できません。個別の物件を丁寧に探していく投資になります。

伝統的な「株式と債券」という投資対象の組み合わせから「株式と実物不動産」という新しい資産の組み合わせを考える。債券に比べリスクの大きな資産ですから、同じような投資成果にはなりません。より慎重なリスクコントロールが必要になります。

日本における資産運用で欠けているのは、金融資産と実物資産を組み合わせるという発想です。金融の分野にいる人たちは実物資産の世界を考慮せず、実物資産の世界の人は金融資産の知識が無いのです。

債券でインカム収入が得にくくなったと嘆く前に、金融資産という枠から投資のフロンティアを少し広げてみる。金融資産と実物資産を組み合わせる「ハイブリッド投資」を提唱する人は、日本にはまだほとんどいませんが、自ら実践しながら理解を広げていきたいと思っています。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。