キモくて金の無いおっさんに救いはないのか? --- 城 繁幸

今週のメルマガの前半部の紹介です。

先日、ネットで「キモくて金の無いおっさん」の存在が話題となりました。弱者というとたいていシングルマザーとか高齢者をイメージする人が多いと思いますが、実は「見た目がぱっとしない&出世もしていない中高年男性こそ、隠れた最大の弱者ではないか」という議論です。

これ、結構当たってると思います。そして、人間、年収や所属企業の大小にかかわらず、誰でも「キモくて金の無いおっさん」に陥ってしまうリスクがあるというのが筆者のスタンスです。

というわけで、今回はなぜ「キモくて金の無いおっさん」が可哀想なのか、そして、彼らを救済するにはどうすべきかをまとめておきましょう。

おっさんが生き辛いわけ

日本社会でおっさんが生き辛いのには、実はちゃんとした理由があります。それは以下の3点です。

1.おっさんは自分を売れない

日本企業では勤続年数に応じて賃金が上がっていく職能給と呼ばれる賃金が一般的であり、おっさんは20代よりずっと高給取りです。だからこそ、おっさんは労働市場ではなかなか引き取り手がいません。労使交渉を毎年やっていて、40代はいくら、50代はいくらという賃金水準が決まっている企業からみれば、おっさんは物凄く割高な存在ですから。

「でも、ちゃんと給料分の仕事はしてるぞ!」と言うおっさんもいるでしょうけど、日本企業は終身雇用前提の人材育成をしている場合がほとんどであり、A社の社内スキルがB社で同じだけ評価される保証はまったくありません。A社で部長やってた人がB社に転職しても「おまえ、こんなこともできねえの!?」とdisられて終わるケースがほとんどでしょう。

というわけで、日本においては、年功序列のレールから外れてしまったおっさんは、なかなかレールに這いあがるのは難しいわけです。一方、これが担当する職務に値札が付く職務給と呼ばれる仕組みであれば、逆におっさんほど有利な社会になります。必要なのは若さではなくスキルであり、若者より職務経験の長いおっさんの方が引く手あまただからです。一部の欧州諸国で若者の失業率が20%を超えているのは、こういう事情があるからですね。

労働市場を手軽に利用できるかどうか。今は正社員の椅子に座れているというおっさんにとっても、この差は物凄く大きいですね。転職チャンスが少ない以上、会社に相当無茶ぶりされても服従するしかないわけですから。

2.おっさんはあまりにも期待されすぎている

そして、そうした硬直的な労働市場の中で、おっさんはあまりにも多くのモノを背負わされすぎています。正社員であれば、終身雇用と引き換えに、男性労働者は滅私奉公するのが大前提です。おっさんは、全国各地、世界各国の空きの出た拠点に辞令一枚でばんばん転勤しないといけません。雇用を守るために、余剰感のある部署から人手不足感のある部署へ異動するのは当然の義務ですから。

また、おっさんは有休もあんまり使っちゃいけませんし、残業もいっぱいしないといけません。雇用を守るために、常にギリギリの人員でやりくりしているのだから、これも当然の義務ですね。とはいえ、これは結構大変なことです。しかも、近年はそこまでやっても、世帯全体の生活費は稼げないおっさんが増え続けています。従業員の世帯全体の面倒を見るような余裕が、もはや日本企業には無くなっているためです。

「あなたの転勤に合わせて家庭に入ったのに、結局パートに出ないといけなくなったのは、あんたが甲斐性無しだからだ!」
と嫁に詰められているおっさんを、筆者は複数知っています。

3.おっさんは逃げ場がない

そして、おっさんには逃げ場がありません。失業して貯金も底をついた場合、おっさんはどうすればいいでしょうか。女性であれば、実家に戻って家事や家業を手伝いつつ英気を養うという手があります。「家事手伝い」という使い勝手の良い言葉も用意されていますし、実際、そうやって優雅で文化的な暮らしを送っている妙齢のご婦人は珍しくありません。

でも、いい年こいたおっさんが実家に戻ったら、それは世間一般から見れば“社会不適合者”以外の何者でもありません。35歳以上ならもはやニートですらなく、平日昼間に外を歩いているだけで職務質問されまくりです。

また、女性であれば、手を差し伸べてくれる人も少なからずあるでしょうが、おっさんにはそれも望み薄です。たとえば雨の降りしきる夜、あなたの家の軒先で、一人の娘さんが雨宿りをしていたとしましょう。どうしたんですか、と聞いて「実は会社が倒産してしまい、住んでいる所も追い出されて泊まるところもないんです」と言われたりしたら、普通なら「どうぞ好きなだけ軒先で休んでいってください、何なら居間でお茶でもいっぱい」くらい言うでしょう。でも、軒先にいるのがおっさんだったら「今すぐどっか行け、じゃないと警察呼ぶぞ」とほとんどの人が言うに違いありません(筆者も言います)。

そして「最後のセーフティネット」と一部で呼ばれることもある水商売にしても、女性ならともかく、おっさんで務まる人はまずいないと思われます。実家にもおちおち帰れない、第三者の善意にも期待できそうにない、水商売も難しいとなると、おっさんに逃げ場なんてほとんどないわけですね。一時期「公園のベンチでスーツ着たまま時間潰してる失業中のおっさん」なるものが流行りましたが、あれなんてまさに逃げ場のないおっさんの典型と言っていいでしょう。

以降、
キモくて金のないおっさんにならないための処方箋
それでも「キモくて金の無いおっさん」になってしまったら

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。