中国の景気減速からこれまで右肩上がりに伸びていた自動車販売台数に急ブレーキがかかりましたが、日本車だけは絶好調です。7月にはいっても好調が続いていることが報じられています。6月には日本車がドイツ車を抜いたことをついこの間ブログで取り上げましたが、その続きです。
中国市場で日本車ではもっとも売れている日産の販売数量はまだ発表されていませんが、6月に前年同月比で41.7%増と大きく販売を伸ばしたトヨタは7月も同24%増の9万2500台、6月に前年同月比で26.1%増だったホンダは7月はなんと同50%増の7万3099台でした。マツダも同14.7%と二桁増をキープしています。
世界でもっとも大きな自動車市場である中国で日本車が好調というのは景気のいい話ですが、なぜ日本車が好調なのでしょうか。
おそらくもっとも大きいのが日中関係の軟化に違いありません。中国人の訪日観光客が急増してきたことがそれを物語っていますが、とくに、昨年秋のAPEC首脳会議にあわせて開いた首脳会談で、習近平主席はぎごちない表情であったとはいえ、安倍総理と握手したことが雪解けの始まりで、さらに今年4月のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では笑顔での握手でした。それが決定打になったのでしょう。
APECでのぎごちない握手シーン
バンドン会議でのにこやかな握手シーン
日中関係 共通の土台が必要 :日本経済新聞
もう日本車を買っても、まわりから非難されることもなく、また襲撃にあいそうにもなくなったのです。それに日本車は中国の若い世代が好むデザイン、また機能だそうです。
サーチナ|日系車の「一人勝ち」!・・・中国市場で販売台数が好調=中国メディア
尖閣は日中の互いが意地の張り合う建前の領域にはいってしまい、緊張関係を続けることが双方にとっても利益的なので、現在の緊張状態を続けるのでしょうが、偶発的な衝突の恐れはあるとしても、それなりの均衡状態にあると見ていいのではないでしょうか。
防衛力は保険にはなりますが、経済や人の交流のほうがはるかにが安全保障につながるな重要な要素なので、中国市場で日本車の販売が大きく回復してきていることは歓迎したいところです。
韓国車が突然売れなくなったのは、反日暴動以降、日本車が売れなくなった隙をついて韓国車の販売が伸びましたが、中国では日本車のほうがブランド力が高く、いわば日本車解禁状態になると太刀打ちができずに減速してしまったのでしょう。
急伸していたドイツ車になぜ急ブレーキがかかったのでかですが、若い世代には日本車のデザインに人気があり、日本車人気の影響を受けたこともあるのでしょうが、独フォルクスワーゲン(VW)の中国合弁である一汽大衆汽車(一汽VW)が中国国内で生産した新型「サギター」のリコールをめぐって、クレームがでていたにもかかわらず対処が遅かったこと、また部品の新品交換ではなく、サスペンションに金属板を補強するという“継ぎはぎ的”な対処法であったことへの不満が爆発したことが影響したのかもしれません。
中国:一汽VW「サギター」購入者が一斉抗議デモ、113都市で返品要求 | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)
独VWの中国快走に陰り、乗用車販売シェア18%に縮小 | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)
そして2022年に冬季オリンピックが開催されることが決まったことが、日本車にとってはさらに追い風になってきそうです。なぜなら中国はPM2.5問題に取り組まざるをえなくなってくるからです。ドイツもプラグインハイブリッドに大きくシフトしてくるようで、中国市場での競争の焦点が「環境」に移ってくることは間違いないと思います。
環境汚染に悩む中国でトヨタが一気に巻き返しに出る! | clicccar.com(クリッカー)
あとは、安倍総理が支持率回復のために万歳突撃で靖国参拝を強行するといった、よほど刺激的な行動でもしない限り、中国にとっても日本は重要な経済パートナー、また技術パートナーなので、日中関係は緩和する方向に向かっていくのではないでしょうか。
そうそう自動車でいえば、日本の三菱のエンジン供給がなければ中国国内メーカーが成り立たないとか。三菱自動車は、自動車そのものはなかなか売れないので、つぎはPHVの技術でも売るのでしょうか。
「三菱製エンジン」なくして、「中国ブランド車」はありえない!?=中国メディア
自動車はグローバル市場で日独全面戦争、さらにグーグル、アップルのIT企業も参戦し、ポストスマートフォンの熱い市場に移っていく気配ですが、そちらはメルマガに書かせてもらいます。