暑いからホラーばかり見ている。この際、古典の「13日の金曜日シリーズ」を完全制覇するつもりやったが、途中から、「なんでジェイソンが片っ端から殺しまくるのか」分からんようになった。シリーズが進むにつれて、物騒で壮大な八つ当たりにしか思えんようにもなってきた。
ところが、「フレディー対ジェイソン」(2003)に出てくるヒロインの何気ない一言で、モンスター誕生の謎が解けた気がする。「ジェイソン・ボーヒーズは(このキャンプ場で)、1957年に11歳で死んだのよ!」……1946年生まれ。全ては戦後教育が悪かったんやな。
このネタ、ワシのオリジナルやないで。自民党の武藤貴也衆院議員(36)にかかったら、良くないことは、因果関係の説明ぬきで、戦後教育のせいになるやろ。きっと、ギリシャ危機も、飛行機の墜落も、火山噴火も、GHQの「愚民化教育」が原因。ちょっと言い分を聞いてみよう。
「国会前でマイクを持ち演説をしているが、彼ら彼女らの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまで蔓延(まんえん)したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ」【本人のツイッターを朝日comから引用:すぐに消えるのでリンクは省略するで】
「国会内でマイクを持ち演説をしているが、彼ら彼女らの主張は『だって戦争で、もうけたいじゃん』という自民中心、極端な利己的考えに基づく。利己的資本主義がここまで蔓延(まんえん)したのは戦後政治のせいだろうと思うが、非常に残念だ」とでも書き直して、一丁上がりにしてもええところやが、もう少しおつきあいしよう。このレベルのボケナス政治家が、ボコボコにされんようでは、日本もマジでやばくなると思うからな。
まず、この暑いさなかにデモをしている人間は、少なくとも利己主義者ではない。誰に頼まれたわけやなく報酬もないのに集まってくるのは、どう見ても利他的行動や。お節介、物ずき、暇人、無責任、野次馬、ただのアホ……こんな方向での批判なら、十分意味があるやろけどな。
それにしても、左右を問わず、その時代に調子コいてる側の政治家は、自分のやり方に協力せん若者には、「利己主義」のレッテルを貼りたがるもんやな。70年代80年代、サヨク全盛だったとき、集会やデモに顔を出さんワシみたいなやつは、反動的利己主義者呼ばわりされたもんや。
真の利己主義者は、徴兵制てなもんに興味はない。兵隊は奴隷とは違う。集めたら給料を払わないかん。徴兵制とは公務員の大増員や。おまけに、軍隊は衣食住に武器まで全て揃えないと機能せん。どこにそんな金があるんや。ただし、徴兵制と同時に年金大幅削減(原則廃止)なら、この問題だけは解決するやろう。
そこまでやっても集められた兵士の志気はムチャクチャ低い。徴兵されたことを理由に「嫌国心」を全開にした若者が銃を持ったら敵よりよほど怖いで。大小の暴動はそこらじゅうでおこって、季節外れの共産主義革命(笑)に行きかねん。どうやって徴兵制なんぞやるんかいな。
今の若者が恐れなあかんのは、徴兵制ではなく、老人介護への強制動員やろ。「おじいちゃん、おばあちゃん。財政破綻で、もう年金は出せませんが、好きにこき使っていい若造を提供します」という話や。これ、どの政党もやりかねんで。そう言えば、社民も共産も福祉大好きやったな。
話がそれた。武藤貴也はん戻そう。追い詰められたら今度は、「学生たちはだまされている」と言い出した。しかも、前の発言は撤回せんらしい。どないなってるんや。
確かに利己主義者がだまされることはようある。そやけど、「不適切な」デモの原因がだまされたことやったら、だましたヤツを糾弾するのが先やろ。楽しそうに戦後教育批判をしている場合やないがな。1つ説明したら2つ3つ矛盾が出てくる。熱中症的ボケナス政治家や。
さて、いつもの「3バカ理論」に行こう。人間には、やばくなると思考を単純化しようとするブチキレ型、思考を合理化しようとするヘリクツ型、思考を停止して乗り切ろうとするボケナス型の3つのタイプがあるという、ワシのオリジナル分類や。
たとえば、酒の飲み方。
ボケナス人・・・とりあえずビール
ブチキレ人・・・大吟醸純米酒一気飲み
ヘリクツ人・・・蘊蓄で飲むワイン
たとえば、好きな肉料理
ブチキレ人・・・BBQ
ヘリクツ人・・・神戸産仔牛のほほ肉赤ワイン煮・マリネした飴色タマネギを添えて
ボケナス人・・・牛丼特盛り
たとえば、医者になるなら
ボケナス人・・・産婦人科
ブチキレ人・・・脳神経外科
ヘリクツ人・・・心療内科
たとえば、お気に入りのサッカーの勝ち方
ブチキレ人・・・延長後半Vゴール
ヘリクツ人・・・息詰まるPK戦を制して
ボケナス人・・・相手が次々とオウンゴール
要は、個人や集団を「愚かさ」のタイプで分類しているんやな。
ブチキレ人・・・短慮
ヘリクツ人・・・欺瞞
ボケナス人・・・愚鈍
確かに、人間が何かアホなことをするときには、3つのうち、最低どれか1つに関係している。特に、大きなことをしでかすのは、短慮・欺瞞・愚鈍の3つが集合した場合や。これを「混ぜるな危険の原則」と呼ぶ。
政治家にも、この3タイプがある。ブチキレ型の典型は石破はんや。基本的に「強力な軍事力があれば国際問題は解決する」という単純な思想。武器や武道など強い物が大好き。あまり悪いやつはおらん。
次に、ヘリクツ型、集団的自衛権みたいな持って回った思想を出してくるのは、このタイプ。国益という概念を振り回し、TPP万歳の親米派が多い。軍事と経済を関連づけて論じるのも、たいていこの連中や。自民党では菅官房長官あたりやな。いけ好かないが、平時には一番頼りになるエリート官僚型や。
さて、本題の武藤貴也はんはともかく、ボケナス型には大物が多い。古いところでは角栄さん、大平さん、小渕さん、民主党なら鳩山さん、アメリカならブッシュ親子。そして、我らが総理大臣、安倍はんもこの仲間や。やることなすことスキだらけやが、人気のある間はボロが出ない。ただし末路はあまりハッピーとは言いにくい人も多い。
その武藤はん。戦前にノスタルジーをえらい感じてるところを見ると、かなりのお年かと思ったが、なんと36歳や。ご自分だけは戦後教育の悪影響を受けていないと言い切る自信はどっから来るんやろうか。かなり不思議な論理や。もしかしたら、筋金入りの不登校かなんかで、戦前教育でも戦後教育でもない、天下無敵の無教育という人なのかも知れん。言い換えれば、ボケナス人のための英才教育やがな。
もっと怖いことを言おうか。武藤はんに票を入れて国会に送り出した有権者、この人らも大部分が戦後教育を受けているはずやが、それは問題ないのかな。「だまされていた」なんて、ご本人が言いださんか、他人ごとながら心配や。これに号泣が加われば、いよいよ「世界」が見えてくる。
今日はこれぐらいにしといたるわ
「どこが、擁護や」、の批判におびえる山城 良雄