70年代、80年代までの経済を一言で言えば先進国主導型経済でありました。G7というリーダーが地球防衛軍のような引率能力を備えていたともいえます。これは歴史的に欧米に日本を加えた主要国という認識が戦前からできた枠組みの中で機能していました。
もっと遡ると日本がペリー来航で開国した後、明治初期に数多くの日本人が欧米に出掛け、ショックを受け、日本のレベルを引き上げなくてはいけないと認識しました。これが明治時代の日本の躍進の大きな原動力です。世界でその力が認知されたのが日露戦争での勝利であったことは異論をはさむ余地はないでしょう。
二度の大戦をはさみ、ずっと続いてきた主要国のリーダーシップによる政治、その後の経済の主導権はオバマ大統領のG20へのシフトで大きくその位置関係を変えました。
それは単に数が増えて網羅する国や人口が増えたという意味ではありません。無宗教とされる日本を別とすればキリスト教の国家がリーダーシップであったのにイスラムと中華思想が入り込み、価値観が複雑になったということではないでしょうか?それまでの時代は欧州の歴史と伝統を通じたセンスを学び、勤勉な日本が製品を作り、アメリカが消費し、新しいアイディアを生み出すというサイクルであったと思います。
ところが、中国の時代がやってきて巨大国家という傘のもと、地球儀経済に強力な影響力を及ぼすようになりました。イスラムも原理主義の人たちが911を始め、イスラム国など紛争の根源を生み出す一方で北アフリカの春の様にもがき、新しい世界を作り出そうとしています。
そこにもってきてEUがユーロ圏という地域経済を作り上げました。北アメリカではNAFTAがあります。更には二国間のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)をあちらこちらで締結することでまるで機内誌にあるフライトマップのようにいろいろな線が複雑に交じり合うようになってきました。
そんな中、かつて元気のあったアメリカの存在感が薄れて来ていることは否めません。それが今の大統領の時代だけなのか、それともアメリカの選んだ新たなトレンドであるのか、これはまだ分かりません。しかし、長年北米大陸で仕事をし、居住していると隣国アメリカそのものがセミリタイアしつつあるように感じます。世界の警官ではない、と言い切ったオバマ大統領のその発言がアメリカの長期的ポジションを表しています。
問題は次のリーダーがいないということではないでしょうか?本来であれば中国がその役割を担えば良いのですが、世界の先進国はそれを素直に認めないでしょう。理由は「恣意」という力によって事実を曲げることをリーダーたちは絶対に許さないからです。中国がごく普通の民主主義国家であれば問題なかったと思います。が、権力闘争に明け暮れ、国民に一体感がなく、都市部と農村部の格差是正は進みません。民族問題も抱え、外交でも名指しで非難される事態が起きています。これではどこまで信用してよいのか分からないという不安感が常時付きまといます。
リーダーの素質とは単純に言い換えれば通知表でオール90点以上取らねばならないのですが、それを取れる国がないことに最大の危機感があるといえましょう。
G20の時代は船頭多しともいえますが、その船頭の能力や手腕がバラバラで舟は当面まっすぐに進まないのかもしれません。うまく進むためには経験と教育、試練などをなんども乗り越える必要があります。日本は1905年の日露戦争勝利で舞い上がった後、第二次世界大戦を通じての試練、バブル経済崩壊後の失われた20年といった試練を乗り越えての今日があります。実に100年以上かかっていると言えましょう。バランス感覚を持った政治、経済の背景をもとに統治能力を持つというのはそれぐらい大変だということです。
さまよえる地球丸のバランスを取れるのはやはりかつてのリーダーがもう少し最前線で頑張る必要がありそうです。特にアメリカがバランス感覚を取り戻すことがまずは先決である気がいたします。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月24日付より