沖縄の歴史的岐路

翁長雄志知事の辺野古埋め立て承認取り消しは沖縄の大きな岐路に於いて遂に別の道に向かって第一歩を踏み出したかのようであります。非常に心配であります。

沖縄問題は一般に知られている第二次世界大戦における悲惨な歴史だけではありません。琉球王国時代からの歴史の中で日本本土との微妙な距離感があったことから始まります。沖縄は誰のもの、という議論を始めると中国が喜んで「うちのもの」と主張するのはかつて中国が琉球王国を保護下に置いていたものを薩摩藩が奪ったとする歴史があるからでしょうか?

日本の内閣には内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)というポジションがありますが、ポスト発足時とは名前こそ変わりましたが日本では要職の一つのように思えます。それは歴代大臣の顔ぶれを見れば分かるのですが、橋本龍太郎から始まり、細田博之や小池百合子、岸田文雄、前原誠司、枝野幸男氏など大物がかつてこのポジションに着き、比較的重要ポストとして意味合いがあったように思えます。

が、いまの大臣は島尻安伊子氏。沖縄ご出身でご主人は元民主党沖縄県代表、思想的には九条改正反対でどちらかというともとは普天間県外移設派で「硬軟」の「軟の役割」人事を安倍政権は選択したように見えます。

沖縄及び北方対策担当という大臣ポストそのものが不思議な気がすると思います。「北方」については今は「北方領土担当」という意味合いも持たせてぼやかしていますが、かつては北海道を意味していました。沖縄と「北方」は本土との微妙な温度差の調整が必要ということであり、大臣ポストを作らなければならないほどやりにくいことがある、ということでしょう。

事実、沖縄振興への政府の予算配分は莫大で14年は3500億円、15年は3300億円規模となっています。この振興費は2011年まで漸減し、2000億円強だったものがそれ以降、5割以上増えているのです。それぐらい気も使っているし、金も使っているということであります。

では翁長知事が再度の訪米を含め、世論に訴えていくとする戦略ですが、これは一般的には効果があると思えます。なぜなら人は「弱いものを助ける」スタンスをとるからであります。ましてや環境問題をも打ち出せば世界が本件を注目する時がくるでしょう。その際に最も気をつけなくてはいけないのは中国が率先して沖縄に肩入れすることです。

中国からすれば軍事的に太平洋に出やすい環境を作りたい中で沖縄が中国寄りになれば日本の分断化を図ることが出来る上に太平洋へのルートが確保できるかもしれません。当然ながら日米安保の中でこれが許されるものではなく、一知事の反乱で日本全体への影響が出ることはあってはならないものでしょう。

日本は本来ヒエラルキーの世界であります。中央官庁をトップとしたピラミッド型の権力体制は江戸時代以前からの特徴であり、地方の藩が謀反を起こせば当然、征伐されてきました。この流れからすれば現代ではチャンバラをするわけにはいかないので中央の権力そして、法廷闘争となります。問題は翁長知事がその長く果てしない戦いにずっと知事として君臨できるかという疑問があります。

翁長知事の絶対譲れない線というのは十分伝わってきますが、これが続けば中央と沖縄の決定的関係のみならず、沖縄県民の賛成派と反対派の亀裂がもっと広がる点に気を揉んでいます。つまり翁長知事の戦略は沖縄をバラバラにしてしまうリスクをはらんでいることになります。

本当にそれでよいのでしょうか?知事の本来の職務とは県民に安定的な成長と平和で幸福な日々をオールラウンドに提供することだろうと思います。それは主義主張という思想の上に立つ知事としての職務であります。それを壊すことは知事としての義務を全うしていないという議論も当然出てくるのではないでしょうか?

翁長知事も引くに引けないという感じが見受けられますが、一度、ここは冷静に原点に立ち返っていただきたいと思います。

では、今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月14日付より