中国の海外反体制派メディア「大紀元」(10月22日)には、米ニューヨーク在住の中国問題専門家ゴードン・G・チャン氏とのインタビュー記事が掲載されていた。チャン氏には「やがて中国の崩壊が始まる」(2001年)という著書がある。
▲ルーマニアの独裁者チャウシェスク大統領の宮殿用建築物(現在「国民の館」)1980年代、建設中の大統領宮殿、ブカレストで撮影
同氏は、「中国は今年、国内総生産(GDP)を7%の成長と予想したが、実際は1・2%だ。北京で噂されているのは2・2%だ。その上、資金の国外流失は1440億ドルから1780億ドルと推定されている。北京政府は経済刺激策を実施しているが経済の停滞を止めることが出来ないでいる。財政負債はGDPの350%にも達している」と述べ、「中国共産党政権下では持続的経済発展は出来ない」と結論を下している。
中国経済の問題点に関しては専門家の分析に委ねるとして、チャン氏の返答で興味があったのは、「国営企業はビルを建てることはできても、文化を築くことはできない。開放的で自由な社会でしか文化は創造されない」と語っている点だ。
チャン氏のメッセージを読んでいると、冷戦時代を思い出した。共産政権下の東欧諸国では立派な党関連の建築物が多かった。中国共産党を含み、独裁政権は大規模な建築物に異常なまでに拘る。しかし、その建物から一歩外に出ると多くの国民が欧米社会を夢み、民主主義を叫んでいたのだ。
例えば、ルーマニアのチャウシェスク大統領(1918~1989年12月25日処刑)は巨大な大統領宮殿を建設していたが、その大統領宮殿の住人になれず、1989年12月、民主革命で処刑されてしまった。建設中の大統領府宮殿は当時、国民を威嚇するよう異常なパワーを放出していた。同建築物を初めて見た時、当方も正直、驚いた。ウィキぺディアによると、同建築物は、米ペンタゴン(延床面積616,540平方メートル)についで世界2番目の大きさを誇っているという。
北朝鮮を訪問したことがないが、金日成主席や金正日労働党総書記の記念像一つにしても大規模で仰々しさが漂う。共産政権の独裁者が大きな建物、記念碑に拘るのは、中身(文化)がないことをカムフラージュするためかもしれない。
世界第2の経済大国となった中国は今日、世界各地に進出し、アフリカのエチオピアでアフリカ連合(AU)本部の建物を建設し、無償贈呈している。しかし、チャン氏流に表現すれば、中国国営企業はAU本部を建設したが、アフリカの文化にこれまでのところ何も貢献していない。経済的に進出している割には、アフリカでの中国人への評判は良くない。中国ビジネスマンの腐敗汚職を批判する声が現地から頻繁に聞こえてくる。
中国共産党政権は過去、文化の空白を補うために同国の偉人、孔子を呼び出して、「孔子に学べ」を合言葉で儒教社会主義を提唱するなど、中国文化の復興に乗り出す一方、ノーベル賞に対抗するため孔子平和賞を創設したが、「ビル」以外に文化を構築するまでには至っていない。その理由は、チャン氏が指摘したように、文化は開放され、自由な社会でしか育たないからだ。共産党一党独裁政権下では中国の真の文化は育たないのだ。
チャン氏は最後に、「日本は将来、再び世界第2の経済大国になるだろう」と予言している。その理由は「日本経済が発展して中国経済を抜くのではなく、日本経済はそのままであっても中国が落ちていくからだ」と説明している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。