日経新聞は「原子力規制委員会は19日、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に必要な安全審査の初会合を開いた」と書いているが、これは誤報だ。安全審査は再稼動とは無関係である。これは閣議決定された答弁書に明記されている。
マスコミまで勘違いしているが、2012年にできた耐震設計指針を1987年に運転開始した敦賀2号機に適用するのは、法の遡及適用であり、立憲主義に反する。そういう恣意的な運用が許されるなら、1968年に建設された霞ヶ関ビルは1981年の耐震基準を満たしていないので、取り壊さなければならない。
先日のBS朝日の番組でも、福山哲郎氏に「浜岡原発を止めた法的根拠は何か」と質問したら、答えられなかった。他の原発もすべて法的根拠なく、規制委員会の「田中私案」と称する3枚のメモで止められているのだ。
おまけに、この記事も認めているように「有識者会合の判断に強制力はない」どころか、それを設置する法律さえない。彼らが「再稼動するな」といったとしても参考意見であり、規制委員会にも廃炉にする権限はない。彼らは原発が新規制基準に適合するかどうかを審査しているだけなのだ。
事故から4年半たったのだから、関係者もそろそろ頭を冷やして、くだらない活断層騒ぎはやめてはどうか。原子炉等規制法のどこにも「25年前にできた原子炉に遡及適用できる」という規定はないのだから、そういうことがやりたければ法を改正するのが立憲主義である。
日本の炉規制法には、事故が起こった場合の緊急停止命令の規定がない。フランスには、政府が苛酷事故の際にすべての原発を停止して緊急点検を命じる規定がある。日本でも同様の規定を設け、事故の原因となった部分のバックフィットを義務づけ、それが終われば運転を再開すべきだ。
ところが日本ではバックフィットの範囲についての法的な規定がなく、「すべての原発が新規制基準を100%満たすまで運転させない」という田中委員長の思いつきで運用されているから、こんな長期にわたって多くの原発が止まっているのだ。
日本でも「ストレステスト」で緊急のバックフィットは行なったが、民主党政権が「空気」で止めてしまった。安倍政権は、法令にもとづいて規制委員会の暴走を阻止し、原子力行政に立憲主義を取り戻すべきだ。