税調の議論は大詰めを迎えているが、軽減税率をめぐって自民と公明の調整が難航しているようだ。経済学者がほぼ100%反対しているように、軽減税率に所得再分配の効果はほとんどなく、益税や不正の温床になる。日本のエンゲル係数は所得によってほとんど変わらないので、高額の食品を買う富裕層に「逆分配」される可能性もある。
消費税の税率が一律であることが逆進性だというなら、それを補うもっとも簡単な方法は、一律に給付金(あるいは税額控除)を出すことだ。財務省はこれをマイナンバーと組み合わせるややこしい案を出して税調に蹴られたが、そんなことをしないで一律に出せばいいのだ。
たとえば公明党の主張する食品の税率軽減の原資1兆3000億円を給付金にすると1人1万円で、標準世帯では4万円になる。これを給付すれば、年収2000万円の人にとってはわずか0.2%の増収だが、200万円の人の収入は2%増えるので逆進性を相殺でき、消費促進の効果もある。
予算が2倍にふくらんだ新国立競技場については、私が7月12日にアゴラで首相が「聖断」を下すべきだと書いた翌週の17日に、首相の判断で白紙に戻った。これは文科省の公式決定をくつがえしたものだが、今回はまだ党税調のレベルだ。
公明案では減収が大きすぎ、自民案の「生鮮食品」というのは曖昧で、納税事務が大混乱になる。いったん一律に増税してから検討してもいいし、その次の増税(10%では終わらない)のときでもいい。今回は首相の「聖断」で、税を簡素化する第一歩にしてほしい。