これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

経営者の趣味ということでは、ゴルフや囲碁・将棋あるいは映画・美術の鑑賞が多数を占めていると言われます。また「伸び盛り企業の経営者」の場合では、旅行等の活動的な趣味の人気が高いとの結果もあるようです。


私は人の趣味に関して、ああだこうだとコメントすることはありません。趣味というのは、個々人夫々の属人的なものだからです。昔は此の趣味とは少しニュアンスが違って、道楽という言葉もよく使われました。

また更に三昧を付けて、道楽三昧と言いました。いま道楽の語が見られるのは、「かに道楽」ぐらいなものでしょう(笑)。三昧に至るとは、道楽であろうが趣味であろうが、仕事であろうが何であろうが、非常に大事な境地だと思っています。

之を『論語』で言えば、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず・・・ただ知っているだけの人はそれを好む人に及ばず、ただ好むだけの人はそれを楽しんでいる人に及ばない」(雍也第六の二十)ということです。

好きであれば良いかと言うとそうでもなくて、楽しむという境地に到達しているのが正に三昧の境地であり、それは生き甲斐を感じるといったことに繋がり、ある意味人生最高の境地とも言えるものです。

あるいは「好きこそ物の上手なれ」という言葉もありますが、自分として好きで上手な事と楽しんで下手な事のどちらが良いかと言った時、仮に下手であったとしても楽しめたらそれで良い、という価値観を有する人も結構いるように思います。

森信三先生も「自己の充実を覚えるのは、自分の最も得意としている事柄に対して、全我を没入して三昧の境にある時です。そしてそれは、必ずしも得意のことではなくても、一事に没入すれば、そこにおのずから一種の充実した三昧境を味わうことができるものです」と言われています。

仕事においては若くして「楽しむ」境地に入るのは、中々難しいとは思います。仕事を深く「知る」ことが出来れば仕事を「好む」段階になり得ますから、先ずは与えられた仕事を素直に受け入れ、熱意と強い意志を持って一心不乱に続けて行くことが必要だと思います。

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