ビッグデータでユニクロ復活はなるか

大西 宏

衣料品の大手チェーンで、ひとり負けの感がただよっているユニクロですが、ビッグデータを活用した商品開発を始めるそうです。日経によると、スマートフォンのアプリを活用し、性別や年齢などの個人属性と購入データを収集し、「最新の売れ筋動向を反映した商品を的確に開発し、短期間で販売できるようにする」らしいのですが、ユニクロの場合は、かなり間接的な効果しかないのではないかという疑問が湧いてきます。
ユニクロ、アプリ活用し売れ筋開発 購入データ分析  :日本経済新聞


コンビニやスーパーなどでは、すでに、ポイントカードを使ってお客さんの年齢や性別などを特定し、購入品目などと結びつけるID-POSを活用している企業もあります。POSデータであれば、何がどれだけ売れたかがわかるだけですが、ID-POSだと、何が売れたかだけでなく、どのような属性の人が買っているのか、またどのような商品が一緒に買われているのかなどの傾向もわかります。

場合によっては、その商品が、どのような動機で購入しているのかを推し量ることすらできます。たとえば、この時間帯は、仕事帰りの主婦の人たちが明日のお弁当の材料を買っているのだろうとか。このあたりになってくると、かなりデータを読み解く、イマジネーションとかセンスが問われてくるところです。

実際、ID-POSはコンビニやスーパーでは威力を発揮します。しかしユニクロで同じ効果が得られるのかというとかなり疑問です。

理由は、データを元にしてなにができるのかを考えると、ユニクロよりも、コンビニやスーパーのほうが打つ手がはるかに多いからです。スーパーやコンビニの場合は、何を仕入れるのかで、顧客の購買行動の変化に合わせていくことが可能です。企業にもよるのでしょうが、個店それぞれ、また地域単位でも可能です。また値引きややポイント増額などのプロモーションで対応することも可能です。その結果からまた手を打っていけばいいのです。つまりPDCAも回しやすいといえます。

そしてなによりも異なるのは、いかにユニクロが実用衣料中心と言っても、アパレルであるかぎり流行トレンドの影響を大きく受けることです。シーズンの間に、データを解析し、最初の読みと異なった場合に、迅速に軌道修正が効けばいいのですが、ユニクロはそういったファストファッションのビジネス・モデルではありません。しかもそんな「クイック・リスポンス」はかならずしもユニクロの商品開発や生産体制で可能なのかは疑問です。

つまりPDCAを短サイクルで回しても、打つ手がなく、長いサイクルでPDCAを回せば、市場の変化、顧客のきめ細かな購買行動がわかったときには、もう消費者のマインドも変わって、もう市場はどこか違う世界に行ってしまっているという感じでしょうか。

もちろん、ビッグデータを活用して得られることもあるかとは思いますが、今のユニクロの不振は、ヒートテックなどの機能商品が一巡し、ナショナルブランドのメーカーや大手スーパーのPBなどからキャッチアップされてきていること、また値上げよって、品質やデザインなどの商品魅力と価格のバランスが崩れ、お値打ち感を失ってしまったことなど、現在の商品やビジネス・モデルが市場の変化についていけていないからだと思うので、ビッグデータ活用という切り口で解決する問題ではないように思えてなりません。
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むしろ今ユニクロに必要なのはなぜ客離れが起こったのかの原因を極め、対策を練ることでしょうが、それは残念ながら、顧客とPOSデータを紐付けてもわかりません。もちろんユニクロもその程度のことは、わかったうえでのビッグデータ活用のシステム導入だとは思いますが。