識者は「ジャニオタ」を傷つけずにSMAPを論じるべき?

 SMAPの解散騒動、そして「謝罪」の方向性不明騒ぎ…。さまざまな報道や憶測が飛び交います。識者は、知識人の務めとして一連の騒動の中から私たちが何を学ぶべきか探り、SMAPを通して今の日本社会と日本人の真相を論じています。
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 しかし、今回の騒動で何の罪もないにもかかわらず、深く傷ついている人たちの存在があまり報道されていないように思えます。その人たちは「ジャニオタ」と呼ばれる人たち。いわゆるジャニーズ系アイドルを応援する人たちです。
 
人は祭りなくして生きられない
 アイドルビジネスは文字通り「アイドル(偶像)」ビジネスです。「華」に恵まれた人材を育て、華を「イメージ」や「ロマン」に昇華して、「夢」や「憧れ(希望)」、そしてそれに触れる高揚感を売るビジネスです。
 普段忘れられがちですが、人は夢と希望がなければ生きられない生き物です。食うに困らない、衣食住が足りている…というだけでは人は生きられません。このことは衣食住が満たされていたにもかかわらず、大人からの愛情を受けずに育った子どもたちが十分に発育できなかった事例研究からも明らかです。
成人でも単調で不安に満ちた日常だけで生きていると、その閉塞感から心の不調に陥ることも少なくありません。人が生きるには衣食住を超えた何か、すなわち夢や希望に浸って日常を忘れる「祭り」が必要なのです。

 どこに「祭り」を見出すかは人それぞれですが、アイドルにそれを見出している人もいます。これは決して悪いことではありません。週末のゴルフに見出している人もいれば、酒やタバコといった嗜好品に見出す人、子どもや孫の成長に見出す人…、人はみな何かに「祭り」を見出すことで生きていけるのです。

ジャニオタの傷つき
 ジャニオタと呼ばれる人たちは、それがたまたまジャニーズ系アイドルだったということです。自分たちの憧れのアイドルが理不尽な扱いを受けている…、それが自分が応援しているアイドルでなかったとしても自分が応援を担当しているアイドルが何時そういう扱いを受けるかわからない…。
この状況だけで、十分傷ついている人もいるのではないでしょうか。そこに憧れのアイドルを「一介の社畜」のように論じられるとどうでしょうか。まさに傷口に塩を塗られるような体験です。このような思いをした方は少なくないようです。

おそらく、もっともジャニオタを傷つけたのはアイドルを理不尽に扱う人たちでしょう。
識者は論じることが仕事なので、出来事から何を学ぶべきか考えなければなりません。
しかし、傷ついている人たちをさらに傷つけることは本意ではないはずです。
罪のある人が傷つくのはある程度はやむを得ないのかもしれません。しかし、罪もなく傷ついた人たちにはいたわりの気持ちを持ちたいものです。

【執筆者】
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杉山崇
神奈川大学教授
臨床心理士、1級キャリアコンサルティング技能士
公益社団法人日本心理学会代議員
精神科、教育委員会、企業メンタルヘルス事業所などで20年余り心理職を務める。
研究者としてはうつ病の対人関係と心理療法の研究で国費助成を20年弱得ている。
「心理学でハッピーになるお手伝い」を目指して、yahooニュース,mocosuku womenなどでも「使える心理学」を配信中!

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