民主党はなぜ嫌われるのか

池田 信夫

民主党の自虐的なポスターが物笑いのたねになっている。「すぐに信じなくてもいい。野党として、止める役割をやらせてください」というコピーは、もう二度と与党はやりたくないという意味だろうか。

このポスターをみると、民主党はなぜボロ負けしたのか、いまだにわかってないようだ。たぶんこのコピーでいう「民主主義」とは、「強行採決しない」とか「憲法を守る」とかいう意味だろうが、そんなものは政策ではない。民主党政権が壊滅したのは、選挙で約束した政策を何も実行できなかったからだ。

彼らは問題を逆にみているが、日本の統治システムはきわめて民主主義的にできている。役所の課長補佐が起案し、課長が関係各省と調整し、局長が政治家と根回しした法案が事務次官会議に上がったときは、すべて決まっている。閣議はそれにハンコを押すだけの儀式だ。この過剰なデモクラシーを変えないで「政治主導」などというスローガンだけでは、何もできない。

憲法の建て前とは違って、国会は「国権の最高機関」ではなく、政策は役所がボトムアップで決める官僚内閣制だ。本来はこの統治システムを変える必要があるが、民主党政権は閣僚や政務三役が官僚に命令するだけで政治主導が実現できると考え、概算要求の変更や特別会計の削減などをやろうとしたが、役所の抵抗で何も実現しなかった。

むしろ問題は、長期にわたる自民党政権の中で形成された過剰なデモクラシーを是正し、意思決定を官邸に集中することだ。そのためには官邸スタッフを増やし、局長級も政治任用にするなどの制度設計が必要だ。そういう地味な努力を省いて、岡田代表が街頭デモに参加して「反安倍」を叫んでも、何も変わらない。

彼が共産党との選挙協力で候補を一本化すれば民主主義が実現できると思っているとすれば、夏の参院選(あるいはダブル選挙)で民主党は惨敗に終わるだろう。一度は徹底的に嫌われて解党しないと、彼らの目は覚めないと思う。