もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら

池田 信夫

もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら自民党は、長期的な財政再建を考える「2020年以降の経済財政構想小委員会」を設置し、その事務局長に小泉進次郎氏を選んだ。稲田朋美政調会長は「将来世代が高齢者になるころの社会を見つめながら、社会保障改革をしっかりやっていく」と、社会保障に斬り込む姿勢を明言した。

これは今まで社会保障の破綻に見て見ぬふりをしてきた自民党が、選挙年齢が18歳に下がるのを見込んで「若者対策」に乗り出したのだろう。党内では早くも強い反発の声が聞かれるので、理論武装のために、この電子版でも読める未来マンガをおすすめしたい(彼は読んだそうだが)。あらすじは、こんな感じだ:

民自党は2017年にようやく消費税率を10%に上げたが、増収分は社会保障に使ってしまったので、国の借金はいっこうに減らない。201*年最初の国債入札では長期国債が大量に売れ残り、山柿首相は「財政非常事態宣言」を出し、売れ残った国債を日本銀行にすべて引き受けさせた。

しかしこれが「日本の財政はついに破綻した」というシグナルを市場に送る結果となり、邦銀はいっせいに国債を売り、ヘッジファンドが大量のカラ売りを入れ始めた。国債は暴落して長期金利は10%を超え、邦銀は数十兆円の含み損を抱えた。

長い間デフレの続いていた日本経済だが、いったんインフレが起こると、それが増幅するのは速かった。物価は1ヶ月で10%以上も上昇し、為替は1ドル=150円まで下がった。これはさらに輸入物価のインフレを引き起こし、それによって金利が上がる…というインフレ・スパイラルを巻き起こす。

これを止めるには日銀が国債の引き受けを止めるしかないが、それは日本政府の債務不履行を意味する。山柿首相は歳出を凍結し、消費税を20%に引き上げる「緊急財政再建法案」を通常国会に提出したが、主民党の後原誠司代表が「歳出削減が先だ」と反対して、法案は参議院で否決された。このため山柿内閣は総辞職し、総裁選挙が行なわれた。

民自党内では「このままでは日本経済が破綻する」という危機感が強まり、山柿が後継指名した岩原に対して、若手議員が結束して「ガラガラポンで行こう」と小泉進次郎を推した。総裁選挙で小泉は「新たな小泉改革を行なう」という主張を掲げて闘い、大方の予想を裏切って当選したのだ。

そして、彼が最初の会見で、記者に掲げたのは経済学者ミルトン・フリードマンが1962年に書いた『資本主義と自由』だった。彼はそこに書かれていた政策を「公的年金の廃止」や「負の所得税」など10項目の公約にまとめ、実行するという。与野党の強い反発を受けながら、彼をキャプテンにした日本という巨大船はどこへ向かっていくのだろうか…