ロッテ創業者は認知症?日本で報じられない家裁審理

新田 哲史

lotteどうも新田です。核実験の次はロケット発射と、北朝鮮の炎上マーケティングがエスカレートするばかりで、韓国紙ヲチが趣味になりそうなこの頃です。まあ、ハングルも読めない私が、興味薄だった韓国主要紙のサイトを連日見るようになったきっかけはロッテのお家騒動なわけですが、焦点の一つが、御年95の創業者・重光武雄総括会長(以下;重光パパ、写真は韓国ロッテのサイトより)が6兆円の大企業グループの総帥の任に耐えられるだけの判断能力があったのかどうか。

韓国で報じられる会長の家裁審理の模様


先日書きました株主構成の件と同じく、日本のメディアでほとんど報じられていないのですが、重光パパの心身と判断能力の現状について、韓国の法廷ではすでに家裁案件となっております。

これは、パパの妹御が成年後見人を指定するように申し立てたためで、日本での経営から追放され、パパを擁して復権を狙う長男は指定に「反対」。これに対し、後継レースで優位に立つ次男は指定に「賛成」という対立構図がここでも繰り広げられており、中央日報によると、先週3日、ソウル家裁の「成年後見開始審判請求」の第1回審理が開かれ、パパ本人は健在ぶりをアピールされたのだとか。

ロッテグループの辛格浩(シン・ギョクホ、重光武雄)総括会長(95)が3日、法廷で「私の判断能力は50代の時と変わらない」と主張した。

お、おう。で、でも、収拾が付かない事態になっているじゃないですか?とツッコミたくなるところですが、カクシャクとした様子を中央日報の記者は見届けておるようです。

辛総括会長はこの日午後4時、ソウル家庭裁判所で開かれた「成年後見開始審判請求」の最初の審理に出席した。黒い高級車に乗って裁判所の地下駐車場に到着した辛総括会長は車いすに乗らず杖をつきながら歩いてエレベーターまで移動した。 辛総括会長の法律代理人であるキム・スチャン弁護士は、「(辛総括会長は)裁判所が生年月日を尋ねると正確に答え、本人の判断力に対し話すよう指示すると具体的に詳しく明らかにし、50代もいまも差がないと話した」と説明した。

ああ、そうですか。お元気で何よりです。でも、そもそも、騒動がここまで泥沼化してしまった根本のところは、まさに会長ご自身が主張される判断能力と同じ50代の頃とは言わないまでも、ご子息が50代に入る頃、つまりパパご自身が80代だった10年前にでも、ご自身の死後にロッテグループ総帥の座を兄弟どちらかに引き継がせるのか、あるいは日韓両体制でこれまで通り、兄弟仲良く住み分けるように厳命しておくとか、将来像を早期に示されなかったことに尽きるのではないでしょうか。

いずれにせよ、95歳のパパを法廷に引き摺り出す事態は、儒教的父権社会と言われる韓国で世論の受け止め方も厳しいと言わざるを得ません。そのあたりの空気感を朝鮮日報の社説に読むことができます。

これまで兄弟は、あらゆる中傷や批判を尽くした攻防で世間を騒がせた。現在双方は韓国で7件、日本で4件という計11件の訴訟で争っている。それでも不足で、高齢の父親まで引っ張り出し、泥沼の争いを演じている。辛東主氏は体が不自由な辛格浩氏をメディアに露出させるなど経営権奪還に父親を利用している。辛東彬氏は辛格浩氏が認知症にかかった、報告をしても覚えていないなどといった主張を繰り返している。息子が父親の精神状態について争う姿を見るにつけ、道徳的堕落、反倫理という側面は否定しがたい。(朝鮮日報16年2月6日【社説】辛格浩氏に精神鑑定、泥沼ロッテお家騒動の道徳的堕落)

タイトルで、ど…“道徳的堕落”と断罪しているのがすごい(汗)日本であれば「モラルハザード」みたいなオサレ舶来語でオブラートに包むところでしょうが、道徳や倫理を生々しく持ってくるあたりが国情の違いでしょうかね。

日本の報道は自粛気味?


しかし、その日本のメディアも、ロッテ問題の「経営権紛争の核心」(中央日報)であるはずのパパの容態を積極的に報じていないのは、不思議な気がします。いかにも韓流ドラマチックな骨肉争いの模様の新たなハイライトシーンとして、もっと注目されてもいいはずなんですがね。

ここら辺、思い当たるのは、なんだかんだいっても広告主としてのロッテの存在の大きさです。去年夏、フジの報道番組に私が本件の解説で出演した後、他の某局のスタッフから取材のご相談を受けた時、「ロッテは大スポンサーだからオンエアしづらい」と率直に語っておりました。

まあ、ロッテ側から「圧力」を受けたわけではないようですが、ロッテと同時期のお家騒動で、こちらは散々報道されまくった大塚家具の売り上げ規模は500億円なのに対し、ロッテは日本だけで3,000億の規模。推察するに、営業サイドが広告主側の顔色をうかがう余り、つい「自粛」機能が作動してしまうのでしょうか。もっとも、取材現場も現場で意地があるので、予告なしのオンエアも辞さない気概もうかがえまして、スポンサーの顔色をにらみながら営業と現場が社内で暗闘するテレビジャーナリズムの宿命の一端を垣間見る機会にもなりました。

ただ、新聞報道が少ないのは不思議なんですよね。お家騒動が家裁審理にまで飛び火したことで、一般紙や日経も呆れながら「ニュース価値がない」と、今は様子見だけかもしれません。

まあ、中間報告は以上です。さて寝る前にガーナチョコのアイスクリームでも食べますか。

Ghana
。。。と思ったら、長男サイドが作った「ロッテの経営正常化を求める会」のウェブサイトで、パパの肉声動画があす9日にも公開されるとの報道が、つい今しがたビジネスジャーナルで公開されており、今週もますます韓流ロッテ劇場から目が離せそうにありません。ではでは。

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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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