「転出超過自治体」最新ランキングワースト50はどこ?

2015年データをもとに算出

2014年、全国の896自治体が「消滅可能性都市」と試算され、大きな話題となった。
少子高齢化という人口の構造的問題に加え、地方から都市への人口流出が重なり、2040年頃には、若い女性の人口が半分以下になる市区町村などの基礎自治体が896にも及ぶという試算だ。
これからの自治体にとって最も重要な課題の一つが、この人口構造の変化への対応である。
少子高齢化の加速など自然増減による要因ももちろんだが、人口問題が自治体にとって重要になればなるほど、その問題は、自治体間での人口の「取り合い」へと進み、都市間競争にすらなりかねない。
こうした状況の中で、みなさんは、自らが属する自治体の社会増減の実態をどれだけ把握しているだろうか。
今回は、全国の自治体における転入転出数の差から、転入超過と転出超過を調べた2015年のデータをランキング形式で見ていこう。

転出超過ワースト3は、北九州市、横須賀市、長崎市

2015年、転出超過となったのは、北九州市(福岡県)が▲3,088人で2年連続1位となった。昨年の▲2,483から500人以上転出が増え、2位に1,300人以上の差をつけてのダントツだった。
2位は横須賀市(横須賀市)。2013年に▲1,772人で日本ワーストだった横須賀は、2014年には▲899人と改善が見られたが、2015年、再び▲1,785人となってしまった。
3位は▲1,574人で長崎市(長崎県)。4位は▲1,504人で日立市(茨城県)。5位は▲1,436人で青森市(青森県)と並ぶ。この3市は4年連続で千人以上の転出超過となっており、もはや構造的な問題になっている可能性すらある。

160218コラム 図表1

<図表1>転出超過ワースト20自治体にみる転出超過の推移

続いて、2015年に転出超過だった自治体を都道府県ごとに数えてみた。

160218コラム 図表2

<図表2>都道府県別 転出超過自治体ワースト50内数

意外なことに、最も多かったのが8自治体の大阪府で、2位の2倍という圧倒的な結果だった。
次いで、北海道が4自治体。兵庫県と山口県が3自治体と続いた。
これは2014年のデータになるが、出生数から死亡数を引いた自然増減の数でも自治体ごとにランキングを算出してみた。
自然増減のワースト1は、▲5,198人で大阪市(大阪府)だった。
人口減少が指摘されるようになって久しいが、こうした自然増減による減少の数と比べても、2015年の転出超過ワースト1の北九州市(福岡県)の超過数は▲3,088人であり、自治体の人口問題にとって、転出超過の与える影響の大きさは、理解してもらえるのではないか。
ちなみに自然減少が次に多かったのが、▲3,100人で札幌市(北海道)、3位が▲2,946人で京都市(京都府)、4位が▲2,892人で神戸市(兵庫県)と続き、5位には転出超過でダントツ1位だった北九州市(福岡県)が▲2,607人と自然減少でも上位に入った。
6位は▲2,021人で静岡市(静岡県)と、ここまでは政令市が続き、一般市で最も自然減少が大きかったのは、7位に入った函館市(北海道)の▲1,992人。次いで8位は転出超過でも2位だった横須賀市(神奈川県)で▲1,985人、9位が▲1,899人で新潟市(新潟県)、10位が▲1,726人でこれまた転出超過で3位だった長崎市(長崎県)と続いた。
自然減少の場合、出生率がそこまで極端に変わることがないため、どうしても上位に大規模自治体が集まるわけだが、転出超過で1位だった北九州市(福岡県)、2位の横須賀市(神奈川県)、3位の長崎市(長崎県)が共に自然減少でもトップ5に入ったことには、なんらかの因果関係があるのかもしれない。

転入超過トップは大阪市、一般市では吹田市(大阪府)

こうして人口減少に悩む自治体がある一方で、「勝ち組」とも言える転入超過の自治体がある。
2015年最も転入超過だった自治体は、+11,662人の大阪市(大阪府)だ。
次いで2位が+8,880人で福岡市(福岡県)、3位が+8,173人で札幌市(札幌市)、4位が+7,869人で川崎市(川崎市)、5位が+7,276人で名古屋市(名古屋市)、6位が+6,921人でさいたま市(埼玉県)と、ここまでが全てが政令市、しかも川崎以外は全て県庁所在地だった。
7位以降は+6,164人で世田谷区(東京都)、8位が+5,163人で江東区(東京都)、9位が+4,911人で品川区(東京都)、10位は+4,715人で板橋区(東京都)と、東京23区の自治体が続く。
人口が地方から都市へと移動している現状が、こうした数字からも明らかになる。
転入超過が大きかった一般市に目を向けて見てみる。
一般市で最も転入超過となったのは、吹田市(大阪府)で+3,178人と、全体1位の大阪市同様大阪府内の自治体となった。
次いで2位が+2,989人で流山市(千葉県)、3位が+2,233人で藤沢市(神奈川県)、4位が+2,181人で越谷市(埼玉県)、5位が+2,062人で柏市(千葉県)、6位が+1,902人で習志野市(千葉県)、7位が+1,893人でつくば市(茨城県)、8位が+1,661人で調布市(東京都)、9位が+1,601人で市川市(千葉県)、10位が+1,522人で豊中市(大阪府)と、大阪の自治体以外は、全てが関東の自治体となっているのも特徴と言える。
都市ブランド構築の事例として取り上げられることの多い流山市をはじめ、柏市、習志野市、市川市と、ベスト10に4市も千葉県の自治体が入っていることも面白い。
とくに市川市は、2011年には転出超過が3,160人、2012年に至っては▲2,750人で全国で最も転出超過の大きい自治体だった。それが2013年に▲418人、2014年に+1,877人と転入超過に転じ、2015年も+1,601人でベスト10入り。安定した転入超過になってきている。

160218コラム 図表3

<図表3>都道府県別 転入超過自治体(一般市)ベスト50内数

一般市における転入超過自治体を都道府県ごとに見ても、その結果は顕著に出ている。
ベスト50市のうち、千葉県9市、東京都9市、埼玉県8市、神奈川県3市と、ここまでだけでも29市になる。茨城県と群馬県を入れると関東だけで32市にものぼる。
都市部の人口増加はもちろんだが、それ以上に「東京一極集中」による東京圏への人口移動があるように見える。
自治体の人口増加については、新たに鉄道が走る、駅ができる、といった要因や、大規模開発、駅前の大規模マンション建設といった要因も大きいが、こうした構造的人口減少社会の中で、すでに自治体間による人口流入の政策競争が始まっていることを認識しながら、各自治体は長期戦略を練っていく必要がある。


<データ1>転出超過自治体ワースト50(2015年)
1位 北九州市(福岡県)▲3,088人
2位 横須賀市(横須賀市)▲1,785人
3位 長崎市(長崎県)▲1,574人
4位 日立市(茨城県)▲1,504人
5位 青森市(青森県)▲1,436人
6位 寝屋川市(大阪府)▲1,363人
7位 呉市(広島県)▲1,345人
8位 下関市(山口県)▲1,330人
9位 東大阪市(大阪府)▲1,186人
10位 姫路市(兵庫県)▲1,173人
11位 静岡市(静岡県)▲1,168人
12位 堺市(大阪府)▲1,097人
13位 枚方市(大阪府)▲1,090人
14位 宇治市(京都府)▲1,083人
15位 浦添市(沖縄県)▲1,066人
16位 奈良市(奈良県)▲964人
17位 佐世保市(長崎県)▲962人
18位 八戸市(青森県)▲936人
19位 河内長野市(大阪府)▲922人
20位 長岡市(新潟県)▲921人
21位 上越市(新潟県)▲914人
22位 沼津市(静岡県)▲906人
23位 函館市(北海道)▲889人
24位 加古川市(兵庫県)▲888人
25位 小樽市(北海道)▲886人
26位 釧路市(北海道)▲884人
27位 岩国市(山口県)▲858人
28位 福山市(広島県)▲856人
29位 延岡市(宮崎県)▲818人
30位 門真市(大阪府)▲789人
31位 尼崎市(兵庫県)▲777人
32位 田川郡(福岡県)▲730人
33位 鹿児島市(鹿児島県)▲703人
34位 唐津市(佐賀県)▲688人
35位 津市(三重県)▲685人
36位 豊田市(愛知県)▲680人
37位 田辺市(和歌山県)▲679人
38位 岩見沢市(北海道)▲676人
39位 豊橋市(愛知県)▲675人
40位 銚子市(千葉県)▲660人
41位 天草市(熊本県)▲653人
42位 常総市(茨城県)▲645人
43位 和歌山市(和歌山県)▲638人
44位 宇部市(山口県)▲636人
45位 秋田市(秋田県)▲629人
46位 今治市(愛媛県)▲619人
47位 盛岡市(岩手県)▲616人
48位 富田林市(大阪府)▲610人
49位 岸和田市(大阪府)▲604人
50位 霧島市(鹿児島県)▲603人

<データ2>自然増減(出生数ー死亡数 2014年)
1位 大阪市(大阪府)▲5,198人
2位 札幌市(北海道)▲3,100人
3位 京都市(京都府)▲2,946人
4位 神戸市(兵庫県)▲2,892人
5位 北九州市(福岡県)▲2,607人
6位 静岡市(静岡県)▲2,021人
7位 函館市(北海道)▲1,992人
8位 横須賀市(神奈川県)▲1,985人
9位 新潟市(新潟県)▲1,899人
10位 長崎市(長崎県)▲1,726人
11位下関市(山口県)▲1,634人
12位 旭川市(北海道)▲1,603人
13位 いわき市(福島県)▲1,528人
14位 呉市(広島県)▲1,528人
15位 青森市(青森県)▲1,498人
16位 和歌山市(和歌山県)▲1,409人
17位 秋田市(秋田県)▲1,282人
18位 長岡市(新潟県)▲1,231人
19位 富山市(富山県)▲1,227人
20位 小樽市(北海道)▲1,221人
21位 足立区(東京都)▲1,198人
22位 東大阪市(大阪府)▲1,167人
23位 今治市(愛媛県)▲1,160人
24位 八王子市(東京都)▲1,154人
25位 尾道市(広島県)▲1,125人
26位 一関市(岩手県)▲1,111人
27位 岐阜市(岐阜県)▲1,109人
28位 沼津市(静岡県)▲1,088人
29位 名古屋市(愛知県)▲1,071人
30位 弘前市(青森県)▲1,020人

<データ3>転入超過自治体ベスト20(2015年)
1位 大阪市(大阪府)+11,662人
2位 福岡市(福岡県)+8,880人
3位 札幌市(札幌市)+8,173人
4位 川崎市(川崎市)+7,869人
5位 名古屋市(名古屋市)+7,276人
6位 さいたま市(埼玉県)+6,921人
7位 世田谷区(東京都)+6,164人
8位 江東区(東京都)+5,163人
9位 品川区(東京都)+4,911人
10位 板橋区(東京都)+4,715人
11位 横浜市(神奈川県)+4,026人
12位 杉並区(東京都)+3,952人
13位 新宿区(東京都)+3,895人
14位 大田区(東京都)+3,840人
15位 中央区(東京都)+3,627人
16位 中野区(東京都)+3,521人
17位 足立区(東京都)+3,427人
18位 吹田市(大阪府)+3,178人
19位 流山市(千葉県)+2,989人
20位 練馬区(東京都)+2,649人

<データ4>転入超過自治体(一般市)ベスト50(2015年)
1位 吹田市(大阪府)+3,178人
2位 流山市(千葉県)+2,989人
3位 藤沢市(神奈川県)+2,233人
4位 越谷市(埼玉県)+2,181人
5位 柏市(千葉県)+2,062人
6位 習志野市(千葉県)+1,902人
7位 つくば市(茨城県)+1,893人
8位 調布市(東京都)+1,661人
9位 市川市(千葉県)+1,601人
10位 豊中市(大阪府)+1,522人
11位 府中市(東京都)+1,512人
12位 船橋市(千葉県)+1,505人
13位 日野市(東京都)+1,472人
14位 金沢市(石川県)+1,410人
15位 小平市(東京都)+1,276人
16位 新宮町(福岡県)+1,190人 町1位
17位 つくばみらい市(茨城県)+1,168人
18位 福津市(福岡県)+1,155人
19位 松戸市(千葉県)+1,144人
20位 草津市(滋賀県)+1,138人
21位 印西市(千葉県)1,064人
22位 糟屋郡(福岡県)+1,031人 郡1位
23位 戸田市(埼玉県)+1,024人
24位 木津川市(京都府)+1,024人
25位 吉川市(埼玉県)+946人
26位 名取市(宮城県)+908人
27位 朝霞市(埼玉県)+891人
28位 木更津市(千葉県)+875人
29位 茅ヶ崎市(神奈川県)+856人
30位 郡山市(福島県)+843人
31位 狛江市(東京都)+813人
32位 福島市(福島県)+808人
33位 武蔵野市(東京都)+805人
34位 黒川郡(宮城県)+785人
35位 ふじみ野市(埼玉県)+776人
36位 八千代市(千葉県)+725人
37位 東久留米市(東京都)+711人
38位 岡崎市(愛知県)+706人
39位 川口市(埼玉県)+703人
40位 富士見市(埼玉県)+689人
41位 新座市(埼玉県)+657人
42位 町田市(東京都)+655人
43位 明石市(兵庫県)+649人
44位 高崎市(群馬県)+638人
45位 日進市(愛知県)+633人
46位 大和市(神奈川県)+625人
47位 稲城市(東京都)+596人
48位 長久手市(愛知県)+585人
49位 京田辺市(京都府)+584人
50位 合志市(熊本県)+582人

高橋亮平

高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人 生徒会活動支援協会 理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。 テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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