アメリカ共和との大統領候補指名争いで、ドナルド・トランプ候補が3戦2勝と一度は負けましたが、トップを走り続けているようです。日本ではトランプという人物に対して、とんでもない差別主義者であるとか、下品な不動産成金というイメージを持っている人が多いようです。
しかし、私は前回の記事トランプが人気の秘密は弱者を対等に扱うからでも書いたように、10年くらい前からトランプに割と注目していました。そうやって、トランプという人物を長きに渡って見ていると、オバマ大統領よりもトランプを何倍も「マトモ」な人物と考えているアメリカ人が多くいるのにも納得してしまいます。
例えば、以前に、オバマ大統領は自伝で高校時代に、飲酒、喫煙、大麻、コカインを使用した経験を明かしています。そして、特に大麻についてオバマ大統領は「アルコールよりも危険が大きいと思わない」と発言し、現在、アメリカでは大麻の合法化が進んでいます。
一方、トランプ氏はというと、「どんなドラッグもやったことはなしし、アルコールも飲んだことがない。たばこも吸ったことがないし、コーヒーも飲んだことがない」と雑誌のインタビューで答えています。さらに、現在の大麻の合法化についても、多数決で決まった事なので尊重はするとは言いましたが、ドラッグには断固反対の立場です。
こういう部分を並べてみると、ドラッグが良くないと思うアメリカ市民であれば、トランプの方がマトモな人物に圧倒的に見えるのではないかと思います。むしろ、アメリカをドラッグに寛容な国にしているオバマ大統領に対し、「失言をしないなら、何をやっても良いのか!」という強い怒りがある人も大勢いるでしょう。
また、トランプ候補の人柄を考えるとき、多くのアメリカ人はトランプ家の健全さというのにも注目していると思います。トランプ家と同じように、不動産王として有名な一族にヒルトン家があります。そして、ヒルトン家のパリス・ヒルトンという名前を出せば、ヒルトン家の子育てについて顔をしかめたくなる米国民は大勢いると思います。
一方、トランプ家の子育てはとても上手くいっていて、セレブ一家にありがちなワガママでどうしようもない子供達がいないのです。例えば、娘のイヴァンカは、ドラッグや浪費などで問題になる様な人物とは真逆で、品もよく、学歴も高く、会社役員もやっていて、なおかつモデルもやっているという素晴らしい人物です。
なので、イヴァンカは、ビル・クリントンにとっての妻・ヒラリーの様に、トランプ氏の秘密兵器といわれる事さえあるようです。また、他のトランプ家の息子たちも同様に、セレブの家にありがちなドラッグなどのトラブルは一切無縁で、クリーンで有能な実業家として活躍しています。
そうやって見てみるとドナルド・トランプという人物は、数千億円の資産を自力で築き、ドラッグはおろか酒やコーヒーにも手を染めず、家族の教育もしっかりとコントロールできる父親としても優れた人物に見えてきます。そういう部分に注目すると、既存の政治家は「結果」というのに興味がなく、失言か失言でないかという、実は「結果」とは関係のない「言葉狩りゲーム」にしか興味の無い人たちに見えてしまいます。
さらに、この様にトランプをマトモな人物と思った上で、彼の暴言の数々を振り返ると、差別主義者というよりは違った顔に見る事も可能になってきます。人によっては、「誰も面倒くさくて触れなかった事に手を突っ込んでいる勇気ある人物」とか、「選挙に勝つという目標を達成するために、他人から叩かれる事でも言い続けられるタフな人物」という肯定的な見方をしているでしょう。
なので、日本のメディアはトランプの躍進をアメリカの終わりだとか、ポピュリストにアメリカが乗っ取られたとか、そんな論調でしか報じていません。しかし、少し視点を変えると、例えば、大麻解禁などを進めるオバマ大統領の方がポピュリスト的であるし、危険な人物に見えなくも無いのです。私は、トランプが大統領になれば、レーガン大統領の様に歴史に残る人物になる可能性も低くはないのではないかと思っています。
渡辺龍太:放送作家・ブロガー
NHKのニュース、金融番組、ワードショーなど、主に情報番組の構成をやっている。著書は「朝日新聞もう一つの読み方」など。現在、放送業界のIT化を見越して、プログラミング習得中!(プログラミングを10日学んだだけで世界が変わった)
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