変わりつつあるタクシー業界

松田 公太

4月5日、タクシー会社大手の日本交通は、東京中心部での初乗り運賃を現在の2キロ730円から1キロ410円にする変更申請を国土交通省に提出しました。

今回の申請は、身近な足として活用してもらうことで売上を伸ばそうという企業の戦略です。全国のタクシー売上高は、1991年度に2兆7000億円だったのが、2012年度には1兆7000億円にまで減っており、利用者の低迷が深刻な問題となっています。

東京ハイヤー・タクシー協会が2015年に行った調査では23区等においては3割弱のお客様が初乗りである2キロ以下で降りていたとのことで、そのような結果等を踏まえ消費者の目線に立って考えられたものだと言えます。

しかし、背景にあるのはそれだけではありません。ITを使った配車サービスの世界的な成長も大きく影響していると思われます。

その代表格であるウーバー(Uber) は、スマホアプリで車を呼べる手軽さと、ドライバーの格付けが分かる安心感で大ヒットし、2010年10月の開始から現在までに世界70カ国370都市に進出しており、契約ドライバーは100万人を突破しています。

そのような新サービスが今後は日本でも認められる可能性があるため(現在は特区での運用が検討されています)、生き残るために何か手段を講ずる必要性を感じたのでしょう。

タクシー業界ではそれ以外にも、IT化やノウハウの共有などが進められており、売上を伸ばすための種々の取組みが始まっています。

ここから分かるのは、やはり、新規参入者はイノベーションとサービス向上をもたらすということ。

今後は、ホテル・旅館業でも同じような動きがみられるのではないでしょうか。こちらは、民泊が急増することが予想されますので、既存の業者はそれに対抗するために更なる企業努力が求められ、結果として業界全体が成長していく可能性を秘めています。

ただ残念ながら、道路運送法、旅館業法などによって、配車サービスも民泊も、まだ全面的に参入できるという状況にはありません。

私が政治家になる前から訴えてきたことですが、産業を発展させるためには、企業が自由に活動できるようにすることが重要です。企業活動への規制は、国民の生命・身体等を守るために不可欠な最小限のものにとどめ、できる限り自由化を進めていく。それこそが日本再生の鍵なのです。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。