終焉を迎えつつあるアベノミクス相場

久保田 博幸

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4月5日のニューヨーク外為市場でドル円は一時109円台をつけ、2014年10月31日に日銀が量的・質的金融緩和を決定した前日の水準にまで低下した。日経平均株価は16000円を割り込み、すでに2014年10月31日の水準を下回っている。そして、昨日までの日経平均株価は7日続落となり、2012年11月13日までの7日続落以来の出来事となった。つまりアベノミクス相場が始まってから初の7日続落となった。

2012年12月の総選挙を経て誕生した安倍政権であるが、その政権奪取に向けて打ち出した政策がアベノミクスと呼ばれる経済対策であった。11月17日に自民党の安倍総裁は熊本市内での講演で、衆院選後に政権を獲得した場合、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べた上、同日に山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」と発言した。アベノミクスとはいわゆるリフレ政策と呼ばれ、日銀が次元の違う金融緩和を行うことでデフレマインドを払拭させるというものではあった。その結果として現れたのが円安・株高と、その円安にも影響された一時的な物価の上昇となった。

安倍政権は常に日経平均をチェックしていると言われるように、株価の動向をかなり意識している。その意味では最初の市場への奇襲作戦といえるアベノミクスの登場はおおいに成功した。ただし、それは欧州の信用不安の後退期という絶妙のタイミングと、リフレ政策による株高を連想したヘッジファンドが美味しいところを持っていったこと(大量の円売り・日本株買いの仕掛け)によるところが大きい。

ところが、アベノミクスの勢いは2014年あたりで一服した。日経平均は16000円台、ドル円は110円台でいったんピークアウトしたのである。これもあり、あらたな打開策として登場したのが日銀による追加緩和である。これは原油安により物価目標達成がより困難になりつつあったことも背景にあるが、あらためて円安・株高の勢いを取り戻そうとの作戦となった。

日銀のバズーカ第二弾もあり、さらに米国株式市場の上昇も追い風となって日経平均は2015年4月に2万円台を回復し、ドル円は2015年6月に125円台をつけた。しかし。このあたりで改めてピークアウトする。2015年8月に日米の株式市場は大きく調整した。これは中国の元切り下げなどもきっかけではあったが、中国経済の減速傾向がはっきりし、世界的な景気減速への警戒が世界の株安連鎖に繋がった。中国などの経済減速は、原油価格の下落の要因ともなり、原油価格の下落がリスク意識を強めさせた。

日米の株価の本格的な調整は、原油価格の下落も伴って2016年に入ってから起きた。ダウ平均は17000ドル台から15000ドル台に急落した。しかし、原油価格の下げ止まりもあり、ダウ平均はその後17000ドル台まで回復している。

ところが日経平均の戻りは鈍かった。ここで再び登場したのが日銀であり、2016年1月の決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和を決定した。しかし、市場はこれに対してネガティブな反応をした。マイナス金利への負の反応もあったかもしれないが、市場はすでに金融緩和に踊らされる地合ではなくなっていた。

あらためて東京株式市場は売られて円高は進み、ドル円と日経平均は2014年10月の水準まで下落した。日銀にとっても打つ手は限られ、政府がいくら財政政策などを行っても地合を変化させることは難しい状況にある。むしろGPIFなども使っての無理矢理な株価対策に対する反動もあるとみられ、よほどのファンダメンタルズの改善でもない限りは、力尽くでの株価浮揚策には無理があろう。円安・株高に頼ったアベノミクスはすでに終焉を迎えつつあり、問題はその後始末にあるように思われる

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。