政府は19日午前、国会同意が必要な7機関13人の人事案を衆参両院に提示し、日銀審議委員では、6月末に任期が満了する石田浩二審議委員の後任には、政井貴子・新生銀行執行役員を充てるそうである。衆院と参院での同意が必要だが、覆されることはないとみられ、石田審議委員の後任は事前報道もあった政井貴子氏になるとみられる。
これにより新日銀法の下に組織された日銀の政策委員のなかの審議委員にあったメガバンクの席がなくなることになる。新日銀法が施行されてからは特に政策委員における産業枠や銀行枠など業界枠が明確になっているわけではない。しかし、石田委員までの前任者はすべてメガバンクからの出身者となっていた。
政井貴子氏はクレディアグリコル銀行・金融商品営業部部長を経て、2007年5月に新生銀行に入行し、2013年4月から同行執行役員となっている(ロイター)。たしかに銀行枠という意味では銀行枠かもしれないが、今回はそれよりも女性枠が意識された可能性がある。
3月末に任期満了となった白井さゆり委員の後任にはサクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表の桜井真氏が就任した。これにより日銀の政策委員には女性が一人もいない状況となっていた。安倍首相が成長戦略の柱の一つとして打ち出した「女性の活躍推進」政策において、「上場企業に女性役員を1人」というのもある。日銀の審議委員は日銀の役員である。日銀理事も役員であるが、こちらも全員男性となっていることで、女性の審議委員が検討されたものと思われる。
ただし、日銀は銀行の銀行でもあり、なぜ日本の銀行を代表するメガバンクから選出されなかったのであろうか。佐藤健裕審議委員は住友銀行出身ではあるが、審議委員に選出された際はモルガン・スタンレーMUFG証券に在籍していた。
もちろんメガバンクから登用する決まりはない。しかし、メガバンクの立場からみて、日銀の役員でもある審議委員には人材を送り込みたかったのではなかろうか。もしかすると政府が女性を選出しようしとしても適任の人材がいなかった可能性もありうるものの、ひとつの可能性として日銀とメガバンクとの間のパワーバランスに何らかの変化があったのかもしれない。
日銀のマイナス金利政策に対して、三菱UFJの平野社長は4月14日の講演で、銀行にとっては「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べていた。経済効果としては、企業の資本支出や個人の投資を促すかは分からず「懸念を増大させている」と指摘していた(ブルームバーグ)。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。