どうも新田です。補選の予想が両方とも当たって、個人的にも夏の本チャンを前にして、色々と学びや参考、課題が見えたところです。北海道5区補選は、熊本の地震が起きたことで情勢に変化が起きたとみられますが、野党は、そういう「不運」に敗因を見出し、SEALDsの奥田君みたいに「健闘したぜ(キリッ)」なんて言ってていいんでしょうか。
単純計算で14年衆院選の「民主+共産」票よりも3000票減らし、4000票上積みした与党候補との差も前回より7000票あまり開きましたし、数字は嘘をつきませんからね。今後詳しい投票結果や選挙運動が影響したあたりについては、北海道名物のスルメイカを噛みしめるように鋭意分析してみたいところです。
実利を得たのは誰?
一方、視点を変えて今回の北海道補選で得をしたのは誰なんでしょうかね。当選した和田義明さんご本人、与党の最高司令官である安倍総理・総裁であるのはもちろんです。はたまた意外にも野党内で得をしたというか、密かに安堵しているのは民進党の保守系で、密かに「民共」合作を快く思っていない先生方。今頃こっそりとトイレの中でガッツポーズしてるかもしれません。しかし、安倍さんもこの選挙結果だけで「平成版・死んだふり解散」やっていいのか決め手にはならないでしょうし、民進党の保守系の先生方も精神的な充足感はともかく実利を得たことにはなりません。
NHK調査で消えた「ムネオ票」の怪 !?
「ムネオ票」の実力はどうだったんでしょうか。2013年参院選で道内の比例得票数では、自民→民主→公明に次ぐ28万票をかき集め、共産(26万票)を上回る勢力を見せました。ムネオパパはこの時、刑務所からシャバに仮釈で出てきて1年7か月。それでも健在ぶりを見せつけました。2014年の衆院選は新党大地としては参戦せず、民主党入りした貴子さんの支援に注力していたこともあり、今回の補選に至るまで微妙にステルス化し始めてましたが、最近の実力については「北海道の選挙はやっぱりムネオ票なしには勝てない」と評価する意見と、「この前まで民主党にすり寄っていたのに節操がない。持ってくる票もあれば離れる票もある」という毀誉褒貶的な見方が相半ばしておりました。
今回のNHKの出口調査では、な、なんと新党大地の支持層が“0”ということになっていて驚きました。
ムネオ親子が死ぬほど嫌いでおなじみの札幌在住・猪野弁護士などは、「消えゆく存在」などと小躍り&小馬鹿にしていますが、額面通りに受け取っていいんでしょうかねえ。改めて計算してみましたが、2013年参院選では衆院5区の自治体では計25,231票ございました。まあ、出口調査に対して本当のことを言わないように支持者に仕向ける某団体のような統制の効いた荒技をする事例もありますが、新党大地の支持層はそういう系統ではありませんし、お金と時間をかけてサンプルを広範囲に取るNHKの調査なのに、「ムネオ票」が忽然と消えた理由は、なかなか興味深いものです。
仮にですが、この時の25,000票の3分の1程度が“自民支持層”に鞍替えした「ステルス・ムネオ」票だったとすると、2014年から今回広がった票差8000票にちょうど相当します。ええ、もちろん、単純計算ですよ。しかもいまだに小学算数の食塩水の計算も怪しい数字の苦手な私のそれですからね。
安倍さんへの“貸し”をどこで返してもらう?
しかし、「ステルス・ムネオ票」の貢献度が0というのはあり得ない。今回と同じ与野党伯仲の一騎打ちとなった沖縄・宜野湾市長選で維新・下地幹郎票が鍵を握ったとされる(出典;現代ビジネス)ように、今回も「第三極」の「ムネオ票」が動いたと解釈するのが自然じゃないでしょうか。
ただ、そこは政界でもいまや屈指の海千山千となったムネオパパですから、リアルに「0」であったとしても、あの得意の話術とアピール力、交渉術で「安倍さんに貸しを作った」というムードを作りそうな気もします。当代きってのバルカン政治家としては真骨頂ともいえる芸当でしょう。いや、ある意味、誉めてるんですよ。ははは。
来年で公民権停止期間が終わって“喪”が明けたところで、目標とする次の戦いの舞台はこちらが取りざたされております。引用元としてはアレですが、日刊ゲンダイから。
娘と共に“自民合流” 鈴木宗男氏の狙いは「北海道知事」(2016年2月1日、日刊ゲンダイ)
なにぶん北の大地は不案内な身ですので、選挙的視点からのムネオ票の動向についてはいろいろご意見ありましょうし、皆さんのご指摘も拝聴して勉強させていただければと思いますが、いずれにせよ、ムネオパパなら安倍さんに対して「次はこっちをよろしくね」と言えるだけの発言力は手にしたように、東京都民の私からは見えます。ちなみに外交分析が鋭い、知人の政治研究者の話も聞いていると、北方領土交渉の新展開も含めた対ロ外交との絡みも含めて、面白いことになりそうで、ムネオパパの動向はますます目が離せなくなりそうです。東京からは以上です。
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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