あるカナダ人の情報通の人との話から無印良品がバンクーバー地区に3店舗オープンする準備が着々と進んでいることが確認できました。無印良品は世界展開を進めておりますが、カナダに於いてはトロントにまず、出店、その経営状況は社内の目標を上回る好調さを維持しているため、出店地域の拡大に踏み切るとのことで、かねてから噂のあったバンクーバーにも店を出すことで本格始動しているようです。
一方、好対照にあるのがユニクロ。この情報通の方となぜユニクロはうまくいかないのか、という話になった際、彼は出店計画がまずかった、と述べています。特にニューヨークの旗艦店についてはユニクロ側は売り上げが伸びているとし、いかにも好調である印象が感じ取れますが、これらの巨大店舗は賃料が高すぎていくら売っても賃料に追いつかない状態だとされています。
事実、米国ユニクロの事業はボロボロで赤字は増える一方です。店舗閉鎖も行い(会社側はスクラップアンドビルトと称していますが、多分、スクラップが増えていく気がします。)会社としては相当のテコ入れをするつもりのようです。当然、一昔前にあったユニクロがバンクーバーにも上陸か、という噂は今は宙に浮いています。
無印とユニクロ、非常に似たセグメントのビジネスですが、ここにきて勢いの芽は無印に軍配が上がりそうな気配がしてきました。
まず、無印は扱っている商品が幅広く、衣料、健康、フード、文具、インテリアなど狭い店舗にこれでもか、と商品が満載されています。例えばシャツを買うつもりで店に入ってもあれやこれや見ていて楽しくなり、つい、これも買ってみようか、という気にさせる商品構成であります。
一方、ユニクロは逆立ちしても衣料店の域を出ることはありません。東京の巨艦店に行っても欲しいもののところに直行し、あとはそれほど見ないことがほとんどであるのはいつものあの商品がそこに飾ってあるという想定を覆すことが出来ないからでしょう。いわゆるサプライズ感や発見する楽しみが欠けてきていてワクワクすることはあまりないのだと思います。
ではH&Mならどうでしょうか?バンクーバーにも沢山あり、ごくたまに冷やかしで入るのですが、なるほど、へぇ、こんなファッションの服があるのか、と思わず手に取ることもあります。ファストファッションとしてデザイン的に面白いものが多いという点ではH&Mの方が期待感はあります。
品質についてはどうか、ですが、これはユニクロは圧倒的に良いと思っています。個人的印象は、無印より上でしょう。ここは確かに衣料店としてのプライドは出ていると思います。
ユニクロは決算が冴えず、価格戦略も急遽、変更しました。実質的値下げであります。柳井会長の苦渋の選択だったと思いますが、これは非常に危険な判断だったと思います。「中途半端な金額を止める」として1990円、2990円という価格を軸にするようですが、これはマクドナルドの元社長の原田氏が陥った罠と同じ感じがします。つまり、売れ行きが落ちたことを過去の2回の値上げを理由とし、値下げすれば良いのだろう、という安直な価格戦略のブレは将来の価格戦略が見えなくなったことを意味します。
ブランドイメージとは恐ろしいものでいったん消費者についたイメージを払拭するのは並大抵ではありません。更にユニクロはもう少しアッパーを目指し、GUとの差別化を図るつもりが実態として顧客の食い合いを生み、ユニクロがGU側に引き下げられてしまいました。
通常、アッパーブランドを作り出す場合、全く違うブランドを立ち上げることで差別化を図るのが王道とされています。トヨタとレクサスでもそうですし、多くのメジャーホテルチェーンが推進するホテルの質によるブランドの細分化はその典型であります。
ユニクロの場合、アッパーブランドを買収により作り出そうとしましたが、決して上手くいっていません。また、ハイブランドとのコラボも挑戦していますが、こちらもイマイチでしょう。私なら全く違う社内の部隊が全く違う店舗でアッパーブランドとしてゼロスタートさせるべきだと思います。が、ユニクロは運悪く、多店舗展開を図っているため、どうしても既存店舗の中に新ブランドを突っ込むやり方をしています。これがそもそもの間違いだと私は強く感じています。
ユニクロの「低価格、ベーシック」のイメージは取れることはまずありませんし、そうなっても困るでしょう。ここで値上げしたいのであれば、それは違うものを作るしかありません。ちなみに無印はユニクロよりも若干価格は強気ですが、それでも溢れる若い女性客は確実に新たなる主流となるでしょう。このままでは主役交代があってもおかしくありません。
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月25日付より