「コツコツ投資家」と「チャリンチャリン投資家」

30年以上「人体実験」と称し、自分の資産を実際に投資して資産運用の経験を積んできました。その経験から、少額の資金でこれから資産運用を考えるという人にアドバイスできる投資方法は「コツコツ投資」と「チャリンチャリン投資」の2つの選択肢になります。

コツコツ投資とは、投資信託の積立を使って毎月資産を積み上げていく方法です。今や投資信託はネット証券で毎月1000円から投資可能です。1万円の積立であっても、10種類の投資信託を組み合わせることが可能になるのです。

コツコツ投資で注意しなければならないのは、投資信託の商品選択です。金融商品はコストが重要です。販売手数料がかからないノーロードファンドで、信託報酬が低いものを選ぶのがポイントです。また、バランス型ファンドと呼ばれるお任せ型のファンドではなく、自分で国内外の株式・債券・REITなどに投資するいくつかの商品を組み合わせるのが良いでしょう。

そして、この投資は始めたら途中でやめないことです。短期で資産が増える魔法の方法ではありませんから、長期投資で老後の資産を形成するといった目的に向いています。リーマンショックのような急落した時も淡々と投資を続けることで、10年後、20年後に成果が生まれてくるのです。

一方のチャリンチャリン投資とは、不動産に投資して家賃収入を毎月「チャリンチャリン」と手に入れる投資法です(ただし、実際には音はしません)。不動産投資というと、まとまった資金が必要と思うかもしれませんが、都心の中古ワンルームマンションを例に取れば、2000万円程度の物件でも、自己資金10万円で1990万円のローンが組めます(貸出しの審査があります)。

管理費などを差し引いた賃貸利回りが4.5%とすれば、年間の家賃は90万円。そこから元利均等返済の1990万円のローンを返済していっても、年間10万円程度のキャッシュフローが生まれます。

ローンを借りて不動産投資をする場合のリスクには、ローンの金利上昇リスク、空室リスク、家賃下落リスク、物件の劣化リスク、震災などのイベントリスクなどがあります。ローンの金利上昇リスクはマイナス金利の現状では目先は大きなリスクとは言えません。空室リスク、家賃下落リスクは都心の駅近物件では限定されたリスクです。建物は経年劣化しますが、中古物件は劣化スピードが遅くなる傾向があります。震災などのリスクは想定外のことが起こるかもしれませんが、RC(鉄筋コンクリート)の物件は耐震性に優れています。

そしてローンを借りていると、団体信用生命保険に入るのが原則になります。これは借り手に万一のことがあった場合の保険で、ローンの残高と同じ金額の死亡保険に加入しているのと同じことになります。ローンが保険の代わりになるということです。

「チャリンチャリン投資」は資産を持っている人か、お金を借りる力を持っている人しか選択できない投資法です。

2つの投資法のどちらにもリスクとリターンがあります。大切なことは、食わず嫌いをしないで、2つの方法を納得できるまで比較して、自分に合った方法を選択することです。もちろん2つの投資法を組み合わせるのもありだと思います。

2つの投資方法を手っ取り早く知りたい人は、私が書いた「初めての人のための資産運用ガイド」を読んでみてください。

(写真は5月9日からSHINOBY`S BAR 銀座で提供するプリフィックスコース(4800円)の前菜3種盛り。記事とは関係ありません。)

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。