自民党知的財産戦略調査会コンテンツ小委員会(会長:小坂憲次)の事務局長を引き受けて3年、コンテンツを如何に利活用し、日本経済の活性化につなげるか、議論を積み重ねてきました。
特に昭和45年につくられた著作権法が、IOT、AIといった新たなデジタル時代を想定していないため、不具合が生じています。イノベーションの創出、新たなビジネスモデルの展開に影響がでています。個別課題が生じてくると文化庁の著作権に関する審議会が開かれて、丁寧過ぎるほどの議論が行われ解決に当たるというやり方でしのいできました。結論が出来る時には、技術、アイデアが陳腐化し、大きなビジネスの芽が枯れてしまうのです。
著作権法自体は、権利の保護を目的とする法律ですから、消費者の利益を大切にすることや利活用を一層促すことに言及しているわけではありません。
何年もの間、知的財産たるコンテンツは、使われてこそ社会意味をなし、利活用されてこそ著作権者にも利益を提供し、取り巻く産業も活性化すると言われ続け、故に、現況は、好ましくないと議論されてきました。解決するために著作権法を改正し「フェアユース」を導入すべきという解決の方法論も提示されました。
しかし、何度チャレンジしても、途中で方向性が変わってしまうのです。過去のプロセスを学び、丁寧な議論を積み上げ、後は担当者の熱意で乗り越えることを肝に銘じてコンテンツ小委員会を開催してきました。この3年間、数多くのヒアリング、そして毎年の「自民党知的財産戦略に関する提言書」への書き込みを一歩一歩積み上げていき、今回の提言書に明確に「柔軟な権利制限規定」を導入することを明記しました。
もちろん、権利者がいてのコンテンツですから、利用する時の基本は契約行為です。契約をしやすくする為のライセンスの円滑化策も、今回の提言書には、書き込んでいます。著作者を代表する集中管理団体と利用許諾契約を結ぶ事によって、著作権者が不明の場合でも、契約しやすくする拡大集中許諾制度、使用料に関してのトラブル処理の円滑化などです。それでも、対応できないものが「柔軟な権利制限規定」の導入によって、救えるようにしたいと考えています。
著作権管理団体からの批判もあると思いますが、新たな時代を一緒につくりませんか。今まで考えられなかった新しいビジネスを守りでなく、攻めで勝ち取りにいきませんか。
小坂憲次先生にコンテンツ委員会事務局長の就任要請を受けた時は、IT政策を担当する僕は、特許権、著作権等の知財を得意としていたわけではありませんでした。しかし、小坂委員長から、IT担当者だからやって欲しいと言われたのです。
それは、デジタル時代に相応しコンテンツ施策を作ることが、経済活性化につながることだからです。二人三脚で、委員会を運営し、多くのことを小坂委員長から学びました。体調を崩し、次期参議院選挙に立候補をしないと聞いた時、残念と思うと同時に、なら著作権法をデジタル時代に適合するように見直すことを在職中に決定しようと思ったのです。
「柔軟な権利制限規定」導入をコンテンツ小委員会役員会で決定し、コンテンツ小委員会、党知的財産戦略調査会の決定を経て、正式にきまりました。もちろん、自民党全体の意思決定も終了しています。しかし、具体的な法案作成作業は秋となり、通常国会で法改正をしたいと考えています。小坂委員長と法案作成をすることが出来ずに残念ですが、アドバイスは受けたいと思っています。
「chizai2016.docx」をダウンロード(自民党知的財産戦略調査会20160提言書)
「chizai20162.ppt」をダウンロード(柔軟な権利制限規定の概念図)
編集部より;この記事は衆議院議員、福田峰之氏(自由民主党神奈川県第8選挙区=横浜市青葉区・緑区=支部長、前内閣府大臣補佐官)のブログ 2016年5月5日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、ふくだ峰之の活動日記をご覧ください。