ゴールデンウイーク。
1週間のスペイン研修から帰ってくると、テレビ朝日から1通の着信履歴が。
サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で、本年4月から始めた”インターネットテレビ局 “(=Abema TV)の討論番組に、急遽、出演することになりました。
テーマは「奨学金」
「ぶり奨学金」について話してほしいとのこと。
吉本新喜劇の小藪千豊さん、教育評論家の尾木直樹さん、与野党の国会議員の皆様などとディスカッションすることになりました。
その中で、有識者の方々が言われていたのは、
●日本は給付型奨学金が少ない
●ヨーロッパは相対的に学費が安く、給付型奨学金も充実
⇒ 日本も給付型奨学金を導入すべき。財源は工夫すればいい。
ということ。
これはこれで事実なのですが、一方でもう少し背景や全体像をお伝えしないと、なかなか正確に分からないのではないかとも感じました。
スペインで、世界唯一の料理大学(バスク・クリナリー・センター)や、モンドラゴン大学の起業コース、行政関係者などと意見交換して痛感したのは、ヨーロッパにおける大学の位置づけの違い。
●ヨーロッパの大学は、いわば「職業訓練校」。
ヨーロッパでは、これまでの職業キャリアを転換したいとき、新しい技術・知識を身につけたいときに通うのが大学。10代高卒の入学者は少なく、20代以上の方が多いのが特徴。「職業訓練校」としての要素がかなり強いんです。
「職業訓練校」だからこそ学費も安い、給付型奨学金も多い、生活の保障もあります。
ヨーロッパでは、職業キャリアの転換・多様な選択肢・複線型の人生設計ということがかなり重視されているように思います。
その意味で、例えば、韓国とは正反対。超学歴社会で、財閥(大企業)の影響力が強く、各企業の定年も早い(役員にならなければ、45歳が定年という企業も存在)という状況で、
●大学受験に失敗した
●大手企業に就職できなかった
●企業の出世レースに敗れた
ときに、挽回が、なかなかできないのが韓国。職業キャリアの転換も難しいのが実情です。その結果、将来を悲観して自殺する人が、世界でも有数に多い国でもあります。
これだけ比べると、「ヨーロッパ万歳!」「ヨーロッパを見習うべきだ!」となるのですが、社会はそれほど単純ではありません。
ヨーロッパは高いレベルの社会保障を賄うために、アジアと比べて相当高い税負担を受け入れています、消費税も概ね20%前後。
そして、雇用保険なども充実しているため、裏を返せば、企業が人を雇用した場合の負担も大きいのが特徴。特にスペインなどでは労働組合の影響が強く、いわゆる整理解雇も難しいので、景気が低迷している状況では、新しく若い人を雇用する企業が極めて少ないのです。(一度、人を雇えば大きな負担があり、整理解雇も難しいので。)
なんと最近のスペインの若年層の失業率は、50%を超える水準で推移しています。日本の就職が厳しい!というレベルではないんです。
そう考えると、働きたい人が働きやすい日本の方が(奨学金は少なくても)良い国といえるかもしれません。全体像を捉えながら、より良い社会に向けて、できることを着実に進めていきたいです。
<もっと知りたい!スペインの教育事情>
●Learning by doing!~世界が注目するスペイン・モンドラゴン大学の学び方~
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68541712.html
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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
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「公私一致」という働き方
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68507744.html
編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。