FTのMr. Ed Crookに会ってみたい

1月末に要請を受けて1ヶ月強で初稿を書き、爾来、なんども加筆したり修正したりして現在、初校校正を終えた段階にある筆者の第三作は、今年1月の原油価格暴落に関するものだ。

なぜ暴落したのか、過去にはどのような暴落の事例があるのか、そもそも原油価格はどのようにして決まっているのか、過去は、今は、そして、では今後どうなるだろうか、といったことを精魂こめて書き上げた。もっとも難しかったのは、当然ながら、今後どうなるか、ということだ。

あの名経営者といわれたエクソンモービルのリー・レイモンドも、BPのジョン・ブラウンも「止めた」という価格予測を、一介のサラリーマン卒業生の筆者が行うことは、もしかすると天に唾する行為かもしれない。

だが、もし何も書かなかったら、本をお読みいただいた方からご叱責を受けるだろう、金を、時間を返せ、と言われるのではないか、と思い、浅学非才を顧みず、大胆にも書き込んでみたのだ。

今朝、PCを立ち上げてみたら、FTに “Fracking will provide a buffer for consumers as oil price rise” と題する記事が掲載されていた(2016年5月17日7:02om)。Comment欄に掲載されており、”The response of the shale industry will be key, writes Ed Crook” というサブタイトルがついている。

一読して驚愕した。表現、アプローチ、把握の仕方こそ学ぶところが多いが価格見通しは、筆者が第三作で書き込んだ「予測」とほぼ同じだからだ。

価格が50ドル以上である期間落ち着いたら、いや60ドル以上だったら、本格的にシェールオイルの生産が再開する。だから、需要家にとって嬉しいことに、将来の原油価格にはキャップがある、というのが彼の結論である。

いやはや。

この記事が触れていないのは、DUCだ。

DUCとは、Drilled but Uncompletedの坑井、日本語では「掘削済み未仕上げ」坑井というものだ。詳しくはぜひ筆者の第三作(6月20日発行予定、文春新書)をお読みいただきたいが、このDUCとは、さほどの時間がかからずにシェールオイルの生産にこぎつけられる類のものだ。すでに水平掘削までは完了していて、あとは水圧破砕を含む仕上げ作業を行うだけだからだ。

一方、本格的な再開には、すでに手放してしまっている掘削リグや作業労働者の手配が必要なので、価格がしばらく落ち込ないだろうという確信めいたものに至らないと手がつかないだろう。また、着手しても手配が完了するまでには相当程度の時間がかかるとみなかえればならない。

だから筆者は、おそらく、50ドル台でDUCからの生産、60ドル台で本格的生産再開という二段階の展開になるのでは、と予測したのだ。

読者の皆さん、ぜひこの記事をお読み下さい。

そして、もしさらに詳しく知りたい方は、ぜひ6月20日に文春新書から発行予定の拙著をお読みください。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年5月18日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。