5月25日の読売新聞によると、安倍首相が夏の参院選と次期衆院選を同じ日に行う「衆参同日選」を見送る公算が大きくなったと伝えた。現時点では衆院解散を考えていない意向を与党幹部に伝え、これは参院選情勢や熊本地震の復興状況などを踏まえたとみられる。来年4月の消費税率10%への引き上げについては先送りする方向で、6月1日の今国会閉会後にも表明するとした。
つい最近まで安倍首相は来年4月の消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し答弁してきた。熊本地震のあとでも同様の発言をしていたため、熊本地震による日本経済への打撃はそれほど大きくはないとの認識であったのか。それでは世界の金融経済は今、リーマン・ショックのような百年に一度とされる危機を迎えているのか。いやむしろ大きな危機は去って米国のFRBは正常化路線に舵を切り替えているぐらいである。
1~3月期の日本のGDPでは多少個人消費が回復していることを示していたが、なかなか個人消費が回復し切れていないのは、日銀の新たな指標からも明らかである。しかし、これをリーマン級の影響によるといった判断はできまい。
つまり本当に消費増税を延期するのであれば、これまでの首相の発言とは矛盾した結果となる。もしかすると今後、嘘をつけるものとして日銀の公定歩合、衆院解散に続いて消費増税が加わることになるやもしれない。
ただし、市場ではかなり消費増税の先送りは織り込んでいた。日銀の異次元緩和にも関わらず物価目標が達成できない理由についには日銀も2014年4月の消費増税による影響を指摘するようになっていたぐらいである。予定通り実施しても物価目標はできると2013年4月には日銀は胸を張っていたはずなのではあるが。
それはさておき、どのような理由付けになるかは知らねど、首相として在任中に二度の消費増税の引き上げなどはできないであろうというのが市場関係者の読みであった。今回予定通りに実施されるほうがサプライズとなる可能性があった。
日銀が大量に国債を購入しているが、物価はいっこうに上がる気配はなく、長期金利は上がる理由がいまのところ見当たらない。10年債あたりまでのマイナス金利により、国債を発行すると政府は儲かるシステムとなっている。国債需給もタイトであり、いまのうちに国債を大量に発行して大胆な財政政策を打つべしとの声も出ている。財政規律は緩みつつある。長期金利は上がる理由がいまのところ見当たらないとしたが、上がるリスクそのものは見えないところで膨れあがっていることにも注意すべきである。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。