日米首脳間で本当に話し合って欲しいこと

米国のワシントンポスト紙は、沖縄における元海兵隊の軍属による殺害事件が、25日の日米首脳会談の中心課題となったと報じている。

Okinawa murder dominates talks between Obama and Abe

お祭りムードの国内報道とのニュアンスの違いが興味深い。

事実、日米首脳会談の中で、安倍総理はオバマ大統領に抗議をしたようだ。しかし、会談後の記者会見で、日米地位協定(SOFA)の見直しについては、特に求めていないことが明らかになった。

本気で抗議するなら、せめて今回問題になった「軍属」の定義の厳格化くらい求めて欲しかった。

今回は「公務外」と言うことで沖縄県警が捜査できるが、もしこれが公務中だった場合には日本側は手も足も出せなかった。

米軍と直接の雇用関係がないものにまで米軍と同様の庇護を与えることには納得がいかない。

先般の衆議院安全保障委員会で、同僚の緒方林太郎議員がこの問題を指摘したが、軍人並みの保護を受けられる対象を、NATOの地位協定と同様、米軍に雇われているもの(in the employ of the US armed forces)に限定していくべきと考える。

実際、地位協定の「軍属」の定義を、日米間とNATOとで見比べてみると、NATOは厳格にemployを要件にしているのに対して、日本はemploy, serving with, or accompanyingと規定されており、「軍属」の定義がより広い。

せっかく日米の首脳が直接話のできるサミットである。外交的な儀礼的なことに時間を費やすのではなく、今まさに目の前にある日米間の懸案に取り組み、両国関係を真に強固なものに深化させる機会とすべきだ。

(参考)
【日米地位協定】
b.  “civilian component” means the civilian persons of United States nationality who are in the employ of, serving with, or accompanying the United States armed forces in Japan, but excludes persons who are ordinarily resident in Japan or who are mentioned in paragraph 1 of Article XIV. For the purposes of this Agreement only, dual nationals,Japanese and United States, who are brought to Japan by the United States shall be considered as United States nationals.

NATOとの地位協定】
b. “civilian component means the civilian personnel accompanying a force of a Contracting Party who are in the employ of an armed service of that Contracting Party, and who are not stateless persons, nor nationals of any State which is not a Party to the North Atlantic Treaty, nor nationals of, nor ordinarily resident in, the State in which the force is located.


編集部より:この記事は、衆議院議員・玉木雄一郎氏の公式ブログ 2016年5月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。