資源価格の低下は日本の利益

池田 信夫

ロイターによると、安倍首相は消費税率の引き上げ再延期について記者会見を開くそうだ。その理由として、彼は「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである。中国など新興国経済をめぐるいくつかの重要な指標で、リーマンショック以来の落ち込みをみせている」というが、これはますますおかしい。


交易条件(出所:日銀)

図のように、輸入物価指数は2014年から30%下がっている。この最大の原因は、原油などの資源(一次産品)価格が暴落したことだが、この結果、交易条件(輸出物価/輸入物価)は大幅に改善し、リーマンショック前の水準に戻った。

交易条件とは「輸出で稼いだ円の価値」で、わかりやすくいえば企業の国際競争力だ。円安による輸入物価の上昇を相殺する原油安は、日本経済にとって大きなメリットなのだ。これを追加緩和で止めようなどという日銀の政策は、トンチンカンである。

安倍首相は「日本を再びデフレのトレンドに戻すわけにはいかない。そのためにはできる限り長い[増税]延期が望まれる」などと、いまだにデフレ(物価下落)と景気悪化(GDPの低下)を混同しているようだが、上の図でも明らかなように、資源小国の日本にとって資源価格の低下は朗報なのだ。

これを契機に外資を呼び込み、KKRがタカタを買収するなど資本市場を活性化すれば、まだ日本企業が成長できる余地は大きい。資本がタックスヘイブンなどに逃避しても消費国で徴収できる消費税は、グローバル時代に適しているのである。