ワーズオートが発表した米5月新車販売台数は、年率換算で0.3%増の1737万台と市場予想の1730万台を上回った。単月ベースでは前月比1.1%減の133.3万台だったほか、市場予想の135.5万台に届かず。メモリアルデーの3連休に大々的なセールを展開したにも関わらず、需要を掘り起こせなかったようだ。営業日が2015年5月から2日短縮したことも、足枷となった。なお、ワーズオートの数字は米国内総生産(GDP)の算出に使用される。
オートデータが発表した米5月新車販売台数は、前年同月比6.0%減の153万6276台だった。前月の150万6977台からは、増加。年率では1745万台と、前月の1742万台を超えて3ヵ月ぶりの高水準だった。米1-3月期のシニア融資担当者調査では自動車ローンの融資条件の引き締めより緩和寄りの回答が多く、銀行は需要を下支えする状況だ。なお2015年9~11月に2000年以来となる1800万台を突破したため、2015年は前年比5.7%増の1747万台と2000年に樹立した1735万台を突破し過去最高を塗り替えた。
メーカー別では、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードをはじめトヨタ、ホンダが予想以下に終わった。一方でフィアット・クライスラーは予想を超え、日産は市場予想と一致した。車種では、比較的トラックをはじめスポーツ多目的車(SUV)の販売がが堅調。ただしガソリン価格は2月に一時1.724ドルと2004年3月以来の安値をつけた後、5月に一時2.339ドルまで上昇した余波から2桁増を記録する車種が減少した。一方で、セダンや小型車は軟調だった。
ケリー・ブルー・ブックによると、5月の平均販売価格は前年同月比3.5%上昇の3万3845ドル(約370万円)だった。4月の1.9%をはじめ、少なくとも年初来で最大を示す。前月比では0.3%低下し、前月の0.2%の上昇から反転した。メーカー別の平均価格を前月比でみると、下落が優勢。排ガス不正問題に揺れるVWが1.7%下落し、前月の上昇からマイナスに転じた。同メーカーは2015年9~11月の下落を経て、同年12月と2016年1月に3%近い上昇、以降は下落傾向をたどる状況。同メーカーの販売台数は、2桁減が続く。一方でフォードが1.6%下落し2ヵ月連続でマイナスとなったほか、トヨタ、ホンダ、日産も前月に続き下落した。ただしGMとクライスラー、ヒュンダイ-キアは上昇した。前年比ではVWをはじめ、全てのメーカーで上昇した。
(出所:Kelley Blue Book)
2016年の新車販売台数につき、自動車価格情報サイトのトゥルーカーは「1800万台」を予想する。ただし、伸び率は3%台とし、2015年の5.7%を下回る見通しだ。全米自動車協会は「1770万台」となる。いずれの数字も、2015年を超える公算だ。以下、米国をはじめメーカー別動向。
GMは前年同月比18%減の24万450台となり、市場予想の13%減より下げ幅を広げた。2ヵ月連続で減少している。小売販売台数では13.4%増の19万613台で、13ヵ月ぶりに減少に反転した。新車販売台数での4大ブランド別では、2ヵ月連続で全滅。小売販売台数も前月は1ブランドで増加したものの、今回は全滅だった。2016年通期の新車販売台数は、1720万台を見込む。新車販売台数の詳細は、以下の通り。
・GMC 14.3%減の4万3395台、2ヵ月連続で減少
→小売販売台数は13.2%減の3万7748万台と、減少に反転。SUVの「アルカディア」が39.0%減の6407台、主力の「シエラ」も7%減の1万7642台と弱く、7車種中で5車種が減少した。
・シボレー 18.6%減の16万9331台、2ヵ月連続で減少
→小売販売台数は14.1%減の12万6024台で、13ヵ月ぶりに減少。セダンの「インパラ」が54.4%減の5252台だったほか、小型車「クルーズ」も27.9%減の2万1252台と大きく落ち込むなどセダンや小型車で2ケタ減が目立つ。ただ新型の小型車「マリブ」は12.8%増の2万4202台と好調だった。トラックでも減少が優勢で「シルバラード」が12.7%減の4万5035台、「サバーバン」も8.6%減の3997台だった。
・ビュイック 22.1%減の1万2099台、3ヵ月連続で減少
→小売販売台数は10.7%減の1万5567台と、減少に反転。「アンコール」が20.8%増の6522台だったものの、「ラクロス」をはじめ4車種が2ケタ減だった。
・キャデラック 16.0%減の1万2099台、3ヵ月連続で減少
→小売販売台数は10.8%減の1万1574台だった。SUVで売れ筋の「SRX」が69.3%減の1774台など減少が目立ち、「エスカレード」のみ14.8%増の1856台だった。
日本とインド市場からの撤退を決定したフォードは前年同月比5.9%減の23万5997台となり、市場予想の4.9%減より下げ幅を広げた。2大ブランド別では、まちまち。フォードが3ヵ月ぶりに減少し、リンカーンは3ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。
・フォード 6.4%減の22万6190台、3ヵ月連続で増加
→アルミ製ボディのトラック「Fシリーズ」が9.0%増の6万77412台と、3ヵ月連続で増加したものの7万の大台は割り込んだ。そのほか好調だったSUVはまちまちで、「エクスプローラー」は4.8%減の1万8813台だった半面、「エスケープ」は」5.5%増の3万861台だった。小型車は軒並み減少し「フォーカス」は27.1%減の1万7455台、「フュージョン」は21.5%減の2万4589台、「フィエスタ」は34.8%減の6150台だった。
・リンカーン 6.9%増の9807台、6ヵ月連続で増加
→新型「MKX」が87.8%増の2794台と、6ヵ月連続で大幅増を迎えた。
フィアット・クライスラー・オートモビルは前年同月比1.0%増の20万4452台となり、市場予想の0.7%減より強い結果を迎えた。前年比プラスは74ヵ月連続で、単月ベースでは2005年以来の高水準。5大ブランド別では1つのみで増加し、前月の2つから減少した。詳細は、以下の通り。
・ジープ 14%増の9万545台、32ヵ月連続で増加
→単月ベースでは、2013年11月以来続く過去最高をたどる。新しく投入された「レネゲード」が146%増の1万868台だったほか6車種中、4車種が増加。「チェロキー」に加え「ラングラー」以外が全て増加した。
・ラム ±0%の4万2837台、増加トレンドを5ヵ月でストップ
→「プロマスター・シティ」が101%増の1833台だったものの、「ラム」が3%減の3万8833台だった。
・ドッジ、5%減の4万3613台、2ヵ月連続で減少
→主力の「キャラバン」が76%増の1万1135台と勢いを維持したものの、「ジャーニー」が30%減の6137台、「チャレンジャー」も10%減の6677台だった。
・クライスラー 19%減の2万4276台、4ヵ月連続で減少
→ミニバン「タウン・アンド・カウンティ」が49%増の8583台だったが伸び率は半減、その他セダンの「200」は62%減の7600台だった。
・フィアット 19%減の3137台、5ヵ月連続で減少
→新型「500X」が1万5525%増の1250台だったが、その他「500」や「500L」などが軒並み2ケタ減を示した。
日本車では、トヨタが9.6%減の21万9339台と市場予想の8.0%減より下げ幅を広げた。ブランド別では、トヨタとレクサスがそろって減少した。営業日ベースでは、全体で2.0%減へ下げ幅を縮小するという。詳細は、以下の通り。
・トヨタ 9.5%減の19万2657台、前月から減少に反転
→引き続きSUVやトラックが牽引し、日本では来春に販売・生産を打ち切る計画のSUV「RAV4」が12.0%増の3万2261台と7ヵ月連続で単月での記録を塗り替えた。もっとも、主力のセダンである「カムリ」は15.8%減の3万6916台、「カローラ」は5.2%減の3万4872台とそろって減少した。
・レクサスは10.1%減の2万6682台、3ヵ月連続で減少
→SUVやトラックは底堅く、4車種中2車種で増加し前月の3車種から減少。一方で乗用車部門は前月に続き軒並み減少しており、6車種中の5車種で減少した。
ホンダは前年同月比4.8%減の14万7108台となり、市場予想の4.3%減より下げ幅を広げた。ブランド別では、ホンダが1−4月の増加トレンドに終止符を打った。アキュラは、3ヵ月ぶりに減少した。詳細は、以下の通り。
・ホンダ 2.9%増の13万3547台、年初来で初の減少
→単月で最高を達成。セダンが好調を維持しており、新型「シビック」が2.7%増の3万5396台とったが、2桁増を5ヵ月で止めた。ただし乗用車は2.2%減、トラックは7.6%減だった。
・アキュラ 20.4%減の1万3561台、3ヵ月ぶりに減少
→「RDX」が在庫不足もあって減少した。
日産は12.8%増の12万3861台となり、市場予想の11%増を追い越していった。2大ブランドは、まちまち。日産は減少に転じたが、インフィニティは3ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。
・日産 1.0%減の13万3496台、増加トレンドは7ヵ月連続でブレーキ
→SUV・トラックで主力の「ローグ」が5.9%増の2万7428台と堅調なペースを保った一方、主力のセダン「アルティマ」が15.5%減の2万8404台と失速した。
・インフィニティ 3.4%増の1万474台、3ヵ月連続で増加
→SUVの「QX60」が36.1%増の4274台と3ヵ月連続で増加し、セダン「Q50」にいたっては5倍増に達した。
その他の海外メーカーでは、フォルクスワーゲン(VW)が17.2%減の2万8779台だった。排ガス不正が発覚した2015年9月、および同年10月は値下げ効果もあって小幅な増加にとどまったが、同年11月にガソリン車にも火種が及んだ影響からか以降は6ヵ月連続で減少。ただしアウディが1.6%増の1万8278台と増加トレンドをたどり、グループ全体では10.9%減の4万7713台へ下げ幅を縮めた。ヒュンダイは11.6%増の6万2926台と2ヵ月連続で増加、キアは0.8%増の5万6508台とそろってプラスだった。燃費不正が発覚し日産の傘下入りが決定した三菱自動車は、5.7%減の9025台となる。テスラ(推計値)は55.3%増の2950台で、ガソリン価格が低水準にも関わらず快調な走りをみせた。
自動車メーカーからディーラーへの1台当たりインセンティブは前年同月比7.1%上昇の3034ドルで、前月の13.3%から鈍化した。前年比での伸び率はフォードが28.4%と圧倒的で、次いでフィアット・クライスラーが19,8%、排ガス不正問題に揺れるVWが17.0%となる。高級車レースで出遅れ気味のBMWも9.0%と引き続き高い。一方でスバルは18.5%低下し、ホンダも15.7%、ヒュンダイも12.8%低下した。高級車市場でトップを干た走るダイムラーも、6.1%低下した。
高級車部門別ランキングは、以下の通り(%は全て前年比)。今回、高級車御三家のメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWがトップ3を維持した。1月に3位の座をビュイックに譲ったBMWはインセンティブを引き上げ販売台の維持に努めた結果、今回はレクサスを抜いて2位に躍り出た。
1位 メルセデス・ベンツ 0.6%減の3万2147台
→1−4月に続き、首位を堅持した。年初来でも0.7%減ながら、14万6981台でトップに君臨している。2015年は、4.7%増の37万2,977台でトップ。2013年は1位だったが、2014年ではBMWに1位を明け渡していた。
2位 BMW 6.4%減の2万9017台
→1月はまさかのトップ3圏外だったが、2−3月の3位を経て4−5月は2位を維持。年初来では8.7%減の12万4581台で、引き続き3位。2015年は1.8%増の34万6,023台で、首位の座を宿敵メルセデス・ベンツに明け渡していた。2014年では1位、2013年は2位だった。
3位 レクサス 10.1%減の2万6682台
→1−3月の2位から、4月に続きBMWの追撃を受け3位にダウンした。年初来では5.2%減の12万5785台とBMWと僅差で2位を堅持している。2015年は10.7%増の34万4,601台で3位。2011年まで11年間連続で首位を飾ったが、東日本大震災後に順位を落とし2014年、2013年、2012年に続き3位にとどまる。
4位 アウディ(VW)1.6%増の1万8728台
→VWショックに揺れるなか、前月の5位から4位へ浮上した。一時期の7位からは回復している。年初来では4.2%増の7万8489台で、5位を維持。2015年は11.1%増の20万2,202台で、5位だった。
5位 ビュイック(GM)22.1%減の1万5265台
→前月の4位から5位へ転落した。年初はBMWを振り切って3位へ急伸したものの、以降はトップ3圏外へ戻す。年初来では1.3%減の8万7632台 と4位を保った。2015年は2.6%減の22万3,055台で4位だった。
6位 アキュラ 20.4%減の1万3561台
→前月と変わらず。年初来では5.5%減の6万7642台で6位。2015年は5.6%増の17万7,165台で6位に収まっていた。
7位 キャデラック 16.0%減の1万2099台
→前月と変わらず。年初来では12.5%減の5万3920台ながら、7位を堅持している。2015年は2.6%増の17万5,262台で、7位だった。
8位 インフィニティ 3.4%増の1万828台
→2月まで8ヵ月連続で8位を経て、3月に7位へ浮上した後で4月に続き8位へ戻した。年初来では、0.7%減の5万3920台で8位となる。2015年も13.8%増の13万3,498台で8位だった。
最新版:自動車メーカー別のシェアの1位はGM、2位フォード、3位トヨタで変わらず。VWは1−2月こそスバルに8位の座を明け渡し3−4月はスバルに並んで8位だったが、今回は単独8位を獲得した。
(出所:Good Car Bad Car)
新車販売台数:モデル別ランキング(%は前年同月比)で、今回はフュージョン(フォード)とシビック(ホンダ)が圏外に消えた。
1位 Fシリーズ(フォード)9.0%増の6万7412台、前月も1位
2位 シルバラード(GM)12.7%減の4万5035台、前月も2位
3位 ドッジ ラム(フィアット・クライスラー)2.8%減の3万8833台 前月も3位
4位 カムリ(トヨタ)15.8%減の3万6916台、前月は5位
5位 シビック(ホンダ)2.7%増の3万5396台、前月は4位
6位 カローラ(トヨタ)5.2%減の3万4872台、前月も6位
7位 Rav 4(トヨタ)12.0%増の3万2261台、前月は8位
8位 アコード(ホンダ)1.3%減の3万1949台、前月は7位
9位 CR-V(ホンダ)8.5%減の2万9359台、前月も9位
10位 アルティマ(日産)15.5%減の2万8404台、前月も10位
SUV版:新車販売台数、ブランド別ランキング(%は前年同月比)
1位 RAV 4(トヨタ)12.0%増の3万2261台 前月も1位
2位 エスケープ(フォード)5.5%増の3万861台、前月は3位
3位 CR−V(ホンダ)8.5%減の2万9539台、前月は2位
4位 ローグ(日産)5.9%増の2万1790台、前月は5位
5位 エクスプローラー(フォード)2.3%減の2万1790台、前月は4位
6位 エキノックス(シボレー)27.9%減の2万1252台、前月も6位
7位 ジープ・ラングラー(フィアット・クライスラー)12.4%減の1万9669台、前月も7位
8位 ジープ・チェロキー(フィアット・クライスラー)2.3%減の1万9208台、前月は9位
9位 ジープ・グランドチェロキー(フィアット・クライスラー)3.6%増の1万8856台、前月は8位
10位 フォレスター(スバル)1.0%増の1万5309台、前月は11位
(カバー写真:Ford)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。