イグジットで注目すべきは日銀の出口か

英国でのEU離脱か残留かを問う国民投票が注目されている。英国のEU離脱問題はブレグジット(Brexit)と呼ばれる。BrexitとはBritain(英国)とExit(退出する)を組み合わせた造語である。

23日の国民投票の結果については残留となるであろうとの楽観的な見通しが強かったとみられる。ところが英国の世論調査で離脱派が残留派を上回ったことにより、金融市場ではブレグジットへの懸念が強まり波乱要因となった。

23日の投票結果次第では、金融市場が大きな波乱を起こす可能性がある。現実に英国のEU離脱となれば先行きの不透明感を強めることも予想され、不安定な相場が継続する懸念はある。

ブレグジットの行方も気になるものの、イグジットといえば最も懸念されるのが日銀の異次元緩和からの出口戦略になるのではなかろうか。

日銀の物価目標の達成が困難となるなか、出口を模索するような状況にはない。しかし、国債の大量の買入がこのままスムーズに継続されることはむしろ考えづらい。今年度の国債発行額のほぼ全額を日銀は買いあげる格好だが、いずれ日銀の国債買入において未達が発生する可能性は高い。

また、日銀はポートフォリオ・リバランス効果も狙っていたが、リスク資産に乗り換えるにしても環境は良くない。年初には原油安やその背景となった中国の景気減速、そしてここにきてのブレグジットのリスクにより、今年は円高圧力が強まり、株価は低迷している。この環境下でなかなかリスク資産へのシフトも難しい。米国債の利回り低下も加わり、米国債への投資もそれほど魅力あるものとはなっていない。かといって欧州の国債では利回りの低下ばかりでなく、流通量そのものがそれほど大きくはない。 このように日本の投資家は投資対象となる商品があまり存在せず、八方塞がりのような状況にある。この状況を改善するには日銀のサプライズ緩和による円安株高、というわけにはもういかないであろう。

むしろ日銀がすべきことは物価目標を長期的な目標として、マイナス金利政策を止めて、国債の大量買い入れも減額し、国債の利回りを正常な水準に戻すことではなかろうか。つまり出口政策である。方針変更の際には一時的なショックが起きるかもしれない。しかし、マイナス金利という異常な事態から抜け出るには、国債買入の未達などにより追い込まれてするよりも、早めに行った方が影響は少なくなるのではなかろうか。今年のイグジットで注目すべきは日銀の出口ということになるのではなかろうかと思う。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。