※画像は加谷珪一
多くの人にとって戦争というものは現実的な話ではない。ニュースで見聞きすることはあっても、身近な問題として戦争をイメージできる人は少ないと思う。日々の生活と戦争はまったく関係ないものだと考えている人がほとんどだろう。しかし戦争から学ぶことは多い。それは人と国家の究極の戦いがあるからだ。経営者が過去のケースから学ぶように、私たちも戦争という究極の戦いから学ぶべき教訓は多い。
特にアフガニスタンでの紛争は私たちに新しい教訓をもたらしてくれた。経済評論家の加谷珪一(以下、加谷)はアフガニスタンでの紛争を考える際には地政学を理解しなければいけないと述べている。
●アフガニスタンをめぐる覇権の方向性
「地政学ではユーラシア大陸の中心部分であるハートランドが世界支配のカギを握ります。アフガニスタンは、まさにハートランドのど真ん中に位置する国です。西側はイランと接し、北側はカザフスタンからロシアにつながっています。東側から南側にかけてはパキスタンと国境を接しており、東の突端では中国とも一部、接しています。まさに東西の十字路のような状況といってもよいでしょう。」
――実際に最初にアフガニスタンに関心をもったのは英国だった。英国はアフガニスタンがロシア勢力下に置かれることを警戒して同国を保護下に置こうとするが、この戦略は困難を極めた。結果的にアフガニスタンはロシアと英国の狭間で揺れながら独立を維持する状況が続いている。
アフガニスタンは地理的に四方を山で囲まれており、ここを占領しても経済的なメリットはあまり見られない。ところが多くの国は干渉を試みようとする。その理由について加谷は次のように答えている。
「ここを敵国に支配されてしまうと、ユーラシア大陸全体の覇権に関わるという地政学的な認識が存在するからです。ちなみに、ロシアと英国によるアフガニスタンをめぐる駆け引きは『グレートゲーム』と呼ばれています。」
「また偶然なのか必然なのかは分かりませんが、ハートランドの地域は、石油や天然ガスといったエネルギーが豊富です。石油全盛時代にはいってからは、エネルギーに関する覇権争いも加わりますから、状況がさらに複雑になりました。」
――過去に、米国Unocalがトルクメニスタンからアフガニスタン経由でパキスタンに天然ガスパイプライン(全長1271km)を建設する計画があったが、このような理由からもこの地域の重要性を理解することができる。いまのアフガニスタンの状況について、加谷は次のように述べている。
「もっとも、英国、旧ソ連、英国は、地政学的な見解から介入を決定するのですが、地政学の基礎になっている地理的条件によって思うような活動ができず、結局、撤退せざるを得ない状況に追い込まれています。ハートランドをこれまで一元的に支配できた国は存在していません」。地政学を理解すれば世界の動きは良く見えてくるのは間違いないようである。
※加谷の新刊
『「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)
尾藤克之
コラムニスト
追伸
6/23(木)に、加谷のトークイベントが紀伊國屋新宿南店3Fで開催される。新宿南店7月閉館に伴い最後のイベントになるとのこと。
日 程:6/23(木)19:00〜20:00
場 所:紀伊國屋新宿南店3F
テーマ:『「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質』
※入場無料&事前申し込み不要
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