イギリスのEU離脱と、これからの資産運用

160625Market今週の最大のニュースは、イギリスの国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が支持される結果になったことです。当初、残留の可能性が高いと楽観的に見ていたマーケットは、離脱ショックで急転。昨日の日経平均は、前日比1300円安まで暴落し、ドル円も一時1米ドル=100円を割り込む円高が進みました。

図を引用した本日の日本経済新聞朝刊には、今後の資産運用の方法についてファイナンシャルプランナーのコメントが紹介されています。しかし、どのコメントを読んでも、正直ピンと来ません。その理由は、資産運用の対象を金融資産に限定しているからです。国内外の株式と債券を組み合わせた分散投資だけでは、もはや充分な分散効果が得られないと個人的には考えています。

今後、イギリスのEU離脱をきっかけに、イギリス経済に対する不透明感が出るだけではなく、イギリス以外の国にもその影響が広がることが予想されます。世界経済の成長期待が弱まれば、株式市場にも悪影響があります。また、株式の変動率の高さから投資を敬遠する動きも出る可能性があります。

世界的な金利の低下も続き、アメリカの利上げタイミングも不透明になってきました。現状の低金利下では、債券運用のリターンも期待できません。

そんな金融市場から、資金がシフトしていくとすれば、その資金の受け皿になるのは、逃避「通貨」としての金(ゴールド)や、利回り資産としての不動産になると考えます。金融資産から実物資産への資金移動です。

不動産にも当然のことながら投資のリスクはあります。しかし、そのリスクは金融資産とはかなり異なるものになります。例えば、空室リスクや家賃の下落リスクといった不確実要因は、グローバル経済の動きではなく、立地(ロケーション)という極めてローカルな要因で決まってきます。日経平均が急落しても、人気エリアであれば家賃が急落したり、空室率が急上昇することは無いのです。

不確実性が更に高まる中でのこれからの資産運用のポイントは、自分の資産を様々なリスクにできるだけ分散させることです。金融資産だけでの資産運用で、グローバルな株価や為替の動きのようなマーケットリスクにすべての資産を連動させるのではなく、別のリスクを持つ資産にも資金を分散させていく。最近投資を始めた太陽光発電なども、リスク分散という観点からも投資の意味があると思っています。

金融資産での資産運用を否定しませんが、金融資産だけの資産運用では、充分なリスクコントロールができなくなってきていることを強く感じます。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。