全国初の18歳選挙権による市長選挙、投票率は18.8%下がる
「18歳選挙権」と言われることももはや目新しくなくなり、まさに今、その18歳選挙権による参院選のまっただ中のわけだが、その参院選に先立って、昨日、福岡県うきは市で、全国初となる18歳選挙権による市長選挙が実施された。
18歳選挙権を実現した改正公職選挙法は今年6月に施行され、施行後初めての国政選挙に適用されることになっているのだが、うきは市の市長選挙は、参院選公示日以降に告示された選挙ではあるが、選挙期間が参院選より短く先に投票日がきたため、逆に全国で最も早い「18歳選挙権選挙」として実施されたわけだ。
マスコミ各社の今日の報道には、18歳の高校生が「若者の投票率が低いと言われているが、自分たちの世代から変われるようにしたい」と、18歳の女子大学生は「投票所に入ってから投票するまで緊張しました。うきは市の未来のため1票を投じることができたと感じています」と話したなどと報じられている。
18・19歳の有権者は有権者全体の2.3%程度にしか過ぎなかったが、こうした新たな有権者が市の未来を担う市長選挙投票したということには大きな意味があるように思う。
一方でこのうきは市長選、実際には全体の投票率が56.1%で前回から18.8%減と1/4以上下がった。
ここまで極端ではないにしろ、参院選でも投票率が下がる可能性は高い。
最近、マスコミ各社から「思ったより若者の投票率が低くなりそうですが、どう思いますか」などと取材をいただくが、18歳選挙権実現の際から前回の2014年12月の衆院選の歳の世代別投票率から18・19歳の投票率を20代の投票率と同じと仮定してみると、投票者数における18・19歳の割合は1.4%でしかない。18・19歳の投票率が平均投票率より低ければ、当然、投票率は下がるということになる。
若年投票率が低ければ、マスコミも含めて世論は一転してこのことを叩くのだろう・・・
ただ、こうしたことは意外なことでも何でもなく、むしろ想定の範囲内のことだ。
そもそも「自分の1票があってもなくても何も影響ない」、「そもそも政治家なんて誰がやっても同じ」などと言って選挙にいかない理由にしているのは、若者だけでなく、大人も一緒だ。
日本ではこれまで、政治どころか社会においても、なかなか若者の声を聞くということがなかった。
ようやくマスコミの関心も出てきた主権者教育についても、現状は「紙に書いて、銀の箱に入れる」といった手段を説明したり体験するレベルに終始している印象だ。
今回の選挙で仮に若年投票率が低いのであれば、それは若者のせいではなく、むしろこうした教育や若者の声を聞くという環境の整備を怠ってきた大人たちにあるのではないかと思う。
「EU離脱を巡る英国の国民投票で1票の重みを実感した」との若者の声
こうした中、うきは市長選挙で実際に投票した18歳の声として「EU離脱を巡る英国の国民投票で1票の重みを実感した」というものがあった。
これは、先月23日に行われたEU離脱を巡る英国の国民投票の結果が、離脱1,625万2,257票(51.8%)に対し、残留1,513万139票(48.2%)となり、わずか3.6%の差で離脱が決まったことを言っているのであろう。
このEU離脱を巡る英国の国民投票、BBCが発表した投票結果の分析チャート( http://www.bbc.com/news/uk-politics-36616028 )では、投票結果を世代別に見ると、若ければ若いほどEU残留の傾向が強く、18歳から24歳では73%もが残留に投票していたとされている。
一方でこのページでは、18歳から24歳までの人口が多い地域では投票率が低かったことが指摘されており、結果的には3.6%離脱が上回る結果となったというのだ。
投票結果が判明した後は、BBCニュースのインタビューに答えた離脱派の人々の多くが「なんてことをしてしまったんだ、本当にイギリスが離脱するなんて思わなかった」と考えていたなどとも報じられる。
投票前、離脱派はEUへの拠出金が週約480億円に達すると主張し、拠出金を「国民医療サービス(NHS)の財源にしよう」とキャンペーンを行ってきたが、投票の翌日になってこの額は「間違いの一つだ」と離脱派を引っ張ってきた英国独立党党首が認めた。
少なくとも、日本における選挙ではこんなことはなくしたいものだと思う。
若者の「ぶっちゃけどうやって選ぶの?」との声に答えろ!
投票を迷っている若者の話を聞くと、「行くのが面倒だ」との声のほかに、「政治について全く分からないので、こんな状態で投票に行くくらいなら行かない方がいいのではないか」といった心配の声が意外に多い。
大人の有権者の中にも「政治分からないから行かない」ということを言う人たちはいるが、こうした行かないことを正当化させるための言い訳と異なり、若者の中には真剣に悩んでいる人たちが思いの外多くいるという印象だ。
投票率にばかり注目の集まる18歳選挙権だが、個人的には、そもそも大事なのは投票率ではなく、投票の質だと思っている。
若者の中にも「選挙なんか絶対に行きたくない」という声は意外と少ないのではないだろうか。
むしろ「選挙行ってやってもいいけど・・・ぶっちゃけどうやって選ぶの?」との声にどう答えるかが重要なのではないかと思うのだ。
今日7月4日、中央大学で、お笑い芸人であり政治教育などを実践する株式会社笑下村塾の代表取締役でもある「たかまつなな」さんと、18歳選挙権イベント「ぶっちゃけどうやって選ぶの?」を行う。
会場には生徒役として、お笑い芸人の「ゆーびーむ☆」さん、ブリランテ学園反則実行委員会の「鈴森彩(あやまる)」さんと「結城まお」さん、就活アイドルのキチョハナカンシャの「さや」さんなどが参戦し、これまでの意識高い系向けのものからさらに幅広い層を対象として、政策の見方、投票先の決め方などを考えるイベントにしていきたいと考えている。
入場無料、参加者も中大生に限らないので、是非、多くの人に集まってもらえればと思う。
18歳選挙イベント
「ぶっちゃけどうやって選ぶの?」
お笑い芸人×大学教授の奇跡のコラボにより、「ぶっちゃけどうやって選ぶのか?」お伝えします。
日時:2016年7月4日19:00-20:30(20:30-21:00懇親会・質問会)
場所:中央大学多摩キャンパス5号館3階(最寄駅:中央大学・明星大学)
※人参加者が溢れたら教室変更します。
出演者:
たかまつなな(お笑いジャーナリスト・株式会社笑下村塾代表取締役)
ゆーびーむ☆(芸人)
鈴森彩(あやまる)(ブリランテ学園 反則実行委員会)
結城まお(ブリランテ学園 反則実行委員会)
さや(キチョハナカンシャ)
高橋亮平(中央大学特任准教授・NPO法人Rights代表理事)
6月15日に、日本若者協議会とワカモノ・マニフェストの共催で行った『参議院選挙直前!18歳選挙権サミット~ワカモノのミカタ政党はどこだ!~』で、各党代表の国会議員から各党の公約について紹介してもらった上で、各分野の有識者たちを交え、若者目線で各党公約から「ワカモノのミカタ政党」を考えた様子はニコニコ動画で生中継も行ったので動画を見てもらうこともできる( http://live.nicovideo.jp/watch/lv265909518 )。
こうしたものも、今回の選挙での投票先としてとくに若者が「ワカモノのミカタ政党はどこだ!」などと考える参考にしてもらえればと思う。
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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