6月26日にドイツの10年債利回りは一時マイナス0.17%まで低下し、過去最低を更新した。6月30日には英国の10年債利回りは一時0.846%まで低下し過去最低を更新した。この日には10年債だけでなく5年、20年、30年物の利回りも過去最低を更新していた。
7月1日に日本の10年債利回りはマイナス0.255%に低下し連日の過去最低更新となった。2年債利回りもマイナス0.335%、5年債利回りもマイナス0.355%と過去最低を更新していた。1日の欧州の債券市場では、スペインの国債までもが過去最低を更新した。スペイン10年債利回りは一時過去最低 の1.047%まで低下したのである。1日の米国の債券市場でも米10年債利回りが1.3784%まで、30年債利回りも2.1873%まで低下して過去最低を更新したのである。
スペイン国債はさておき、米英独の国債利回りが低下するというのは、これまでいわゆるリスク回避によるところが大きかった。安全資産として買い進まれるという構図であった。しかしいま取り立てて世界的な金融経済リスクが起きているわけではない。もちろん6月23日の英国の国民投票で予想外のEU離脱が決まったことによるリスク回避の動きはあった。英国では格付け会社による格下げもあった。しかし、英国債も安全資産として買い進まれて過去最低を更新しているのである。
ドイツに関しては、ECBがすでに2014年4月にマイナス金利を導入していたにも関わらず、ドイツの10年債利回りはプラスにいた。ところが今年1月の日銀のマイナス金利導入で日本の10年債利回りがあっさりとマイナスになったため、それに追随したような格好となったようにも見える。特にドイツで何か起きているわけではない。ECBについては、あのドラギ総裁のことなので追加緩和をしたがっている可能性はあれど、ドイツ連邦準備銀行のバイトマン総裁は追加緩和は不要と一蹴している。
米国についてはFRBの利上げが6月に見送られ、英国のEU離脱の決定で7月も無理、年内も無理かもといった観測で、米10年債の利回り低下が起きたとしたとしても、過去最低利回り更新はやはりおかしい。それほど米国のファンダメンタルズが悪化しているわけではない。強いて言えば世界的な長期金利の低下の流れに乗っかっている格好ではなかろうか。米利下げが一部に出ていたとようであるが、さすがに利下げをしなければならないほど米国経済が悪化しているようには見えない。
スペインの10年国債利回りが過去最低というのも腑に落ちない。もちろんこれは世論調査に反して与党が議席を伸ばした先週の総選挙の結果を受けての影響はある。それ以前に2012年7月に7%を超えていたスペインの10年債利回りが低下したのは、欧州の信用不安による危機が後退したためである。しかし、スペインの10年債利回りが1.047%まで低下して過去最低を更新するというのはあまりに極端すぎる。こちらもドイツの国債と同様に、ECBが大量の国債買入とともにマイナス金利政策を導入したたともいえる。
ファンダメンタルズはさておき、大きな世界的な危機はスペイン国債利回りの低下をみても完全に後退しているはずである。しかし、その危機のため対応策として行った非伝統的な金融政策はむしろ拡大されている。特に日銀とECBがこの異常な日米欧の国債利回りの低下を招いているともいえる。この世界的な国債バブルの行き着く先はどこなのか。その鍵を握っているは意外に日本国債というか日銀なのではないかと思われる。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。