知財本部:やっぱり紛糾しました〜

 次世代知財システム検討委員会。とりまとめ会合。のはずだったが、とりまとめられず、今回と次回の2回かけて落としこむ。それもまだ怪しいのですが。

 アジェンダは、フェアユース、AI、3Dプリンティング、データベース。

事務局案。IoT、ビッグデータ、AIなどデジタル・ネットワークの発達を最大限に活用することで、新たなビジネス・イノベーションを促進するとともに、社会を豊かにする新しい文化の発展に結びつけていくための次世代の知財システム。
これは合意。

ネット化に対応する仕組みとしては、米国型フェアユース、英国型フェアディーリングなど柔軟な権利制限、拡大集中許諾、裁定制度の拡充、報酬請求権化などさまざまな手段を検討し、新システムを構築する方向。

AIが生む創作物に関しては、保護策とプラットフォーム対策を検討するとともに、世界に先駆けて取り組んでいる日本の議論を海外発信する、という案。

国境を越える侵害問題について、リーチサイトへの法制対応を進める。オンライン広告についても手を打つ。対策の実効性を高めるためにプラットフォームとも連携する。という案。

これら事務局案に対し、委員から意見が噴出しました。その多くは、より果敢で前向きな記述を求めるものです。ぼくの趣味に合います。

瀬尾委員:著作物の基本的考え方が変化している。創作の「意思」を持たず現われる情報を、著作物とするかどうか、どう扱うかが重要。

水越委員:国際プラットフォームに対抗するというトーンの記述が目立つが、自らプラットフォームを構築・展開する、よりアクティブな方向性の政策を打ち出すべき。

喜連川委員:AIで創作が萎縮・後退するというメッセージを出すより、AIを使いこなし、高度なコンテンツを生んでいくという方向性を出すべき。

紛糾したのはフェアユースの扱いです。
フェアユース導入の方向性を明確にすべき。多くの委員のフェアユースへの思いを反映すべき。という意見と、アメリカ型のフェアユースには反対、という意見が対立しました。

ぼくが言い訳しました。

「次世代知財システムを生むというわれわれの思いとミッションを書き下したい。大胆に攻めたい。一方、事務局としては慎重を要する事情がある。本委員会は通常の役所の懇談会と違い、アウトプットが知財計画に直結するため。

委員コンセンサスとして思い切り書き込みたい部分もあるが、知財計画として政府が責任をもって行動すべき事項を書き込むというミッションもあるため、その連立方程式を解きたい。幸い、われわれにはあと1回議論のチャンスがある。」

さて、収まると思いきや、最後に爆弾提案がありました。

瀬尾委員:(1970年の)制定以来、タコ足で落とし込んできた著作権法を、50年ぶりに大改正すると宣言するのはどうか。

あちゃ〜。大好き。こういう提案。

福井委員:著作権法がお茶の間法になった。ところが、専門家が読んでもわからない法律になった。「誰でもわかる著作権法」を作るべきだ。

あちゃ〜。大好き。こういう提案。

さて、この提案も含め、最後、どう落とし込みますか。
もう座長の腕をとうに超えて、事務局の思惑も超えて、結論は、時代が決める。
そんなかんじ。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。